大角設計室のブログ

おだやかなくらし。刻が染み込む家をみんなで創ります。

家づくりと面倒

前回のこのブログ記事をおさらいしたい方は

下のリンクをごらんください。

o-sumi.hatenablog.com

 

 

さて今日はどのくらい現場が進んでいっているでしょうか。

その進捗状況について書いていってみます。

 

 

 

 

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配筋検査(はいきんけんさ)をしています。

 

コンクリートを使って建物を支えたりする「基礎」と呼ばれるものを作る途中で

建築基準法に則った施工になっているかをチェックする作業です。

 

大角設計室の「基礎工事」は他のブログ記事でも何度か書いていますが

結構技術と労力を要します。

 

簡単に言うと「手間」なのですが、

今日はこの手間について考えてみましょう。

 

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建築の世界において「手間」が増えるということは

「工事関係者全てに手間」が増えるということと同義です。

 

よって地中に隠れてしまう「基礎工事」に関しても

「杭工事業者」「整地業者」「鉄筋業者」「給排水設備業者」「シャッター業者」

電気工事業者」「木工事業者」など大勢の人と連携と打ち合わせが必要になります。

 

そんなわけで、シッチャカメッチャカ現場はわいわい楽しい感じで進みます。

 

 

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基礎工事が進む頃、離れた加工場では大工さんが粛々と木工事の段取りを進めます。

 

大きな工場で機械的に木材を加工するのではなく

今回は「手刻み」を行っています。

世間一般で作られている住宅だと

機械で加工するとおよそ1日2日で済む工程を

この現場では5.6ケ月の手間暇かけて、仕上げます。

 

一本一本の、木を見て、選んで、ひっくり返して

墨を打って、ノミと槌でトンカチトンカチ刻んでいきます。

 

それを何度も何度も、来る日も来る日も繰り返します。

 

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この墨の線に沿って職人が加工していくのですが、

最終的にどんな形になっていくか想像できますか?

 

 

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こんな形に職人の手は作り変えていきます。

とても美しいですよね。

 

手間暇をかけるということは

現在の「安いうまい早い」のファストファッションな流行からゆうと

逆行するところとなります。

 

「手間暇かければいいものが出来て当たり前」と思うかもしれませんが

そうは問屋が卸しません。

やっぱり腕の良し悪しが、最終的にできるものの出来を左右します。

下手な人がいくら時間とお金をかけても美しく仕上がりません。

 

 

 

では、結局のところ建築における「手間」はどういったものでしょうか。

大角設計室としてはそういった「手間のかかる図面を描く」ことで

どれほどの良さを住まい手に還元できているのでしょうか?

 

 

よくデザインは「お金がかかる」と言われます。

なぜか。

 

デザインの世間一般のイメージは贅沢や金任せの道楽です。

「余計な手間」が増える分コストアップにつながります。

 

 

でも大角設計室の引く一本の線に込められた

「手間のかかる図面」は少しニュアンスが違います。

私たちと素敵な職人が創る「手間暇」は

ほとんど一般の人にはわからない形でデザインされています。

 

先ほどの基礎の時のようにほとんど地面に隠れる場所も

先ほどの加工された木の断面のように

つなぎあわさると、全然見えなくなるのに

これでもかとスベスベに平滑に仕上げられています。

 

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一般の人に分かりやすく派手派手しいデザインは

「お金をかけた甲斐があるな」と分かりやすさを持ちます。

ですが逆に

一般の人から完成すると「隠れてしまう部分にお金をかけること」は

簡単にごまかすことが出来ますし、

頑張ってもその良し悪しが一般の人には伝わりにくく

頑張り甲斐のない作業となります。

少し悪く言い換えると

工事業者にとっては楽に儲けることができる場所でもあります。

 

ですが、何事もそうですが、

地味中の地味な作業工程にこそ、建築を長く良く保つための

本質的な部分があるものまた真実であり、

その多くが「隠れてしまう部分」であったり

一見では「よくわからない部分」に含まれています。

 

 

とどのつまり建築業界で言われる「面倒な建物」とは実は二種類あります。

 

この「一般に伝わりづらい箇所を頑張る」建物と、

実は「分かりやすく見せかけの手間」の建物です。

 

住まいての本当に欲しいと思っている理想がどちらなのか

設計者はよく見極めないといけないですね。

 

もともとある

「安い、早い、うまい」の素晴らしい理念は

現在の建築業界では少しネジ曲がって流布されているのかもしれません。

 

「一般に伝わりづらい箇所を頑張る」部分を余計な贅肉と決めつけて

そこを削ることでコストをコントロールしている状況が

日本のすべての製造業にはあります。

 

基本的にはこの流れは日本中でこれからも加速し続けると思いますが

幸いにも、地方の小さな設計事務所である大角設計室は

「一つ一つに向き合いたいという」施主に恵まれています。

 

そんな中で私たちが住まいてと一緒に創る建物は

1年目よりも2年目。

5年目よりも10年目に

「だんだんとじわじわ〜と魅力が途切れず伝わるよう」

そういう時間を経るごとに魅力的になる強度あるデザインを

手を抜かずに創っていこうと思っています。

 

先ほど「一般の人にはわからないデザイン」と言いましたが

私の実感として、いや確信としてあるのが、

「ちゃんと一般の人にも伝わる日が来る」ということです。

 

 

そんな経験があるから、今日もフラフラになりながらも

頑張って図面を描くことが設計事務所は出来るんだと

思っています。

 

 

 

 

ゆあさ

 

 

 

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