大角設計室のブログ

おだやかなくらし。刻が染み込む家をみんなで創ります。

既存建物との関係性

 

古い建物の間に門をデザインしています。

 

門が建つだけで、ハッキリと

敷地のパブリックな部分とプライベートな部分が明確になりました。

 

そうすると不思議と、視線を区切られて視野が狭くなるにも関わらず、

中庭は心理的バリアがなくなり、広く感じます。

人間って、物理的なデザインを超えたところに面白さがあります。

 

 

門の屋根にも少し工夫があります。

 

素材が銅板をセレクトしています。

一般の方はあまり建築に使われる鉄板素材について詳しくないと思いますが、

「銅」というのは、建材のなかでも「やわらかい」部類に入ります。

 

その素材特性を利用したデザインが日本には古くからありまして

「ムクリ」と呼ばれる屋根面をフラットではなく、曲線に曲げる技術です。

 

このデザインのいいところは、

「印象がふんわりと角のない優しい感じ」になるところです。

 

そんな心理的視覚効果をつかって、門として「セキュリティー」的役割は

ハッキリさせながらも、一方でお客さんを迎える「おもてなし」的雰囲気も

大事に両立させたデザインを実現しています。

 

そのほかにもこの門には工夫が色々あるのですが、

それはまた別の機会にブログ記事にかければと思います。

 

 

門は「区切る」と「つなぐ」両義的な意味を持ちます。

 

建物と建物の間に配置される場合は

それら既存建物とのデザイン調和や動線の整理もおこなうので

面白くも難しく、設計者の力量が試されるケースが多いです。

 

今回は、写真では分かりずらいですが、

この門が出来ることで、敷地建物全体のシマリがぐっと良くなりました。

高さや意匠が良くバランスしています。

 

 

住まい手より、門脇のアプローチの途中に、

「すこし遊びの空間を何か考えて」とリクエストされたので

昔から日本にある民家や寺社仏閣の塀デザインを土間にアレンジしました。

 

この瓦はもともとこの家を解体した時に出たものを再利用しています。

 

既存建物と「時間軸」や「歴史性などのストーリー」を

重ねてデザインすることも、再生工事の楽しみです。

 

 

 

 

 

ゆあさ