大角設計室のブログ

おだやかなくらし。刻が染み込む家をみんなで創ります。

ただいま再生工事


空をツンザくエンジン音とともにあの現場が帰って参りました!


7/9以来の再生工事更新です!  →記憶を呼び覚ますためクリック これまでの再生工事おさらい
ながらく更新できず申し訳ありませんでした。


さて前回は屋根の鉄板を葺き替えたところまでご紹介しましたので、
今回は建物の内装の方を少しご紹介致します。

と、その前にちょこっとおさらい。
再生工事のプロセスは


1.解体
2.基礎工事
3.あしがため・補強工事
4.屋根仕舞


の順にすすんでいきます。前回まででこの第四工程である屋根仕舞までブログでご紹介しました。
そもそもなぜこの順番に工事は進むのでしょうか。
様々な理由がありますが、いくつか理由をあげてみましょう。



第一に、木材の状態が良好かどうか確認するためです。


解体工事では建物を梁や柱だけの状態に戻していきます。
そうすることによって、天井の裏に隠れた雨漏り箇所や、
壁の中に隠れた柱の腐れ、床下に潜む白蟻被害等があきらかになります。
強度的なことはもちろんですが、美観的にも再利用できる柱・梁・板なのかを判断します。


第二に、建物全体の重量を軽くする事によって、建物を僅かに動かす事を容易にするためです。


再生工事では、柱脚もとの補強や基礎工事をおこなう上で
既存の建物を支えて僅かに浮いた状態をつくることが必要になる場合があります。
(建物全体をジャッキアップして大きく持ち上げるかはケースバイケースです。)
そうして柱の脚もとが傷んでいる部分を取り替えたり、基礎や土台を新たに入れていきます。

屋根の瓦が載っている状態では、重くて柱や梁は持ち上げることが困難になりますし
柱がおぼつかない状態の時に、建物の上部が重たいと倒壊の危険性があります。


 

古民家の場合、屋根をささえる立派な梁丸太が入っている事が多いのですが、
それらを支えている柱は割合少なめな事がほとんどです。
もともと夏に快適に暮らせるように改良されてきた日本の民家は
田の字プランに代表されるように襖や障子等軽やかに間仕切る建具と柱で構成されており、
壁が少なめな構成になっています。


そこでこの現場では、屋根の荷重をスムーズに基礎に伝えるために
補強の柱や、壁、ヤスメと呼ばれる梁等を新たに加えました。
先ほども言いましたが強度的にはもちろんの事、美的に美しいかどうかも
検討しながら慎重に補強していきます。


民家の魅力である既存の柱や梁が内装の雰囲気を、より深みのあるものへと導きます。
構造であると共にそれは美しいインテリアの一部です。



以前ご紹介した例で言いますと、
既存の柱を取り囲むように新しい列柱で構造補強すると同時に
それが既存の柱の美しさを際立たすように配置されています。
新しい物だけでも古いものだけでも実現不可能な、
現代的な民家として「甦える」美しい空間となります。


床を貼る


さていよいよ床を貼っていきます。
今回はライフスタイルの変化から、使わなくなった土間空間に床を貼り、
居間台所食堂にと再生する計画でした。


上の写真は工事途中の床の下地を貼った状態です。
下の写真は工事前の土間だったころの様子です。上下どちらも写真中央に見えるのが大黒柱です。
上下の写真で何が変化したように皆さんは感じられるでしょうか?


再生前と再生後で大きく異なるのは、床のレベルが上がる事によって
天井高くにあった梁丸太がとても視覚的に近い距離になるという事です。
民家を再生する時にいつも床を貼ると空間の見え方が一気に変化し面白いなぁと感じます。


段々古いものと新しい物が混在した状態になって来ました。
どんどん「甦えり」つつあります。
次回は内装「壁編」です。


ゆあさ

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