大角設計室のブログ

おだやかなくらし。刻が染み込む家をみんなで創ります。

京都の再生現場です。
どんどん左官工事が仕上がってきています。


写真は階段をのぼって二階の通路部分です。
列柱のスリットから光が、差し込み
漆喰の壁がその光をやさしく室内に広げます。



光がとんで


僕の担当現場ではあまり経験が無いのですが、
この現場は手すりの部分(写真中央部)にアールをつけているのが特徴です。

通常、建築現場のセオリーとしては
仕上の素材が角度を変えるとき、「見切り」と呼ばれる緩衝剤を入れます。
なぜなら、物質は全て乾燥収縮・変化しますから、
時間が経つと隙間が必ず発生します。

その変化を見込んで最初から、素材と素材の間に仕切りを設け
隙間を目立たなくするのですね。
しかし、そういったセオリーがある中で、
今回の工事は見切り無しで漆喰が塗り上がっています。



光がまわる


左官工事は建築素材の中で唯一、
継ぎ目が無くどこまでも仕上げる事が出来ます。
なぜなら、細かい粒子を水に溶かして塗り、乾くと硬化するという性質があります。
どろんこ遊びを思い出していただくと分かりやすいでしょうか。
乾く前にどんどん塗っていけば、理論上は永遠に継ぎ目の無いものが可能です。
しかし、同時にクラックと呼ばれる小さなヒビが入りやすいので
職人さんの腕や、工期、下地のなどを要検討しないといけません。

もしそれらの問題がクリアできるなら
最初に掲載した写真のように、左官独特の空間効果を味わうことができます。
窓から差し込んだ光が、アール状に漆喰を塗り回された手すりに当たるとき
漆喰の面を光が回り込んで室内を美しく照らします。
空間のなかに見切りと呼ばれる、仕切りが減るため
視線のさきに邪魔なものが無くなり広く感じる効果もあります。


マドカらの光がやわらかく、「まわってまわって」。
「円」を設けることで空間が「ヒロシ」。

ただ、それだけの事が言いたくて、今日は文章が長くなってしまいました。



ゆあさ