大角設計室のブログ

おだやかなくらし。刻が染み込む家をみんなで創ります。

茅葺き屋根をなおすこと

いま、茅葺き屋根の民家を直すために
東北へ通う日々が続いております。


茅葺き屋根を直すことなんて、私の担当した現場だけでも
何件かあるので、対して珍しいものとも感じていませんでしたが


最近、茅葺き屋根の再生の案件が他にもありまして
「全国的に見ると、そういった仕事をしたことがある」
設計事務所は、そう無いのかもしれないと、考えを改められました。
それは、同時に、茅葺き屋根を直したくても、どこに頼めば良いか分からず
再生を断念するケースも多いだろうということです。


雪にしっとりとつつまれた屋根は
存外に美しく、青白い東北の夜に浮かんでいました。



岡山の温暖な地域で育ったわたしが
九州や、四国、関西、東海、関東、東北と
暑い、寒いを乗りこえて、

「民家を直したい」

という声を、届けられる度に、何とか答えようと
歯を食いしばって、法律や、施行技術、金額、工期など
様々なハードルと向き合ってきました。

そして、
現地には「民家を残したい」と切実に思う施主と
きまって、頼りになる施工者、職方衆と出会うことができました。

これからも、そうした要望に応えられる設計事務所でありたいと思っています。



地方の仕事は、入念に地元の方からヒアリングを行う事で
独自のルールや、大切にしている価値観等に触れることができます。

私達は地方の設計事務所なので、
同じ地方の生活者としてのベースは、施主と共有出来る強みがあります。

「ベースは一緒」これって結構大切です。

何故なら、「茅葺き屋根」を使って再生する場合に
茅葺き屋根の温もりや」「寒さや・厳しさ」「おおらかさ」
そして「モダン」さ。
言葉に表しきれない部分をベースとして共有出来るかは
民家の再生の場合は特別に大切です。


それが出来なければ、民家はただのカタチ遊びの道具、または、
ノスタルジーの為だけの箱に成り下がります。


再び命を吹き込むことは出来ません。
民家の命は過去の刻と断絶されてはいけないのです。

民家は、その土に根をはった生きた建物です。
設計者の心根が、地面にしっかり根深く伸びて
その土地の養分を糧に出来るかで
その土地に生き続ける民家の美しさは決まるような気がします。




面白いしごとや、価値のある仕事、
味わいのある仕事は
地方の設計者と地方の施工者が掛け合わされることで
十分うみだすことができます。


その仕事は、地方色のある純粋なものであればある程、
世界にも普遍的な価値をもたらすでしょう。

そう、大間のマグロが、小さな港で水揚げされるのと同じように。



そんな単純なことを、雪で覆われた民家は教えてくれます。
肌をつらぬく寒さが、助けを求める民家の切実な美しさを際立たせています。

今日も、地方の小さな事務所が
全国の宝石のような民家を、再び輝かせるために
せっせと、民家との対話を続けています。



ゆあさ