大角設計室のブログ

おだやかなくらし。刻が染み込む家をみんなで創ります。

建築家×アート×老舗×???

明日8/22-30日の期間。
廣榮堂本店倉敷雄鶏店(倉敷市)にて山口敏郎氏の展覧会を行います。
この建物は建築とアートが切っても切り離せません。
それは何故でしょうか。


良い建築は、建築家だけでつくる訳ではありません。
店舗建築ともなると、なおさらです。


良い施主がいて、良い作り手がいて、良い設計者がいる。
住宅の場合はこの三者が揃うことで良い建築がうまれます。


しかし、店舗の場合は不特定多数のお客さんが利用します。
ですから、その第四番目の要素に対し、
いかに建て主達の「おもい」を届けるかが重要です。
建て主達の熱をお客さん達が共有出来る出会いが生まれれば
そんな幸せなことはありません。

では如何にすれば共有が可能になるのでしょうか。




建築家は「空間」をつくります。
これは目に見えているようで実は高度なトレーニングが無いと中々見えません。
なにせ「空(から)の間(あいだ)を見る」ことです。
よくよく考えてみるとよくわかりませんね。

でも見えないけれど、感じれるものって実生活には色々あります。
例えば、「風」。「音」。「香り」。「味」。「温もり」。「愛情」。

この「なにもない(ように見える)ところに、あるもの」。
そこを建築家は美しく創るわけです。とりわけ今回この見えない要素の中で
テーマになっているものがあります。

それは「刻(とき)」です。

廣榮堂本店倉敷雄鶏店は「刻の美術館」という名称を持っています。
今、この瞬間、この場所で、ここに存在した思いを刻んで欲しい。
そんな心の目をよーく凝らさないと見逃す一瞬を、感じられる場にしたいと思っています。


それを実現する為に「アートの力」が必要でした。


アーティストは「物質」をつくります。
これは目に見えていますから、鑑賞者は理解しやすい情報が与えられます。
色がきれいだとか、手触りだとか、面白がりやすいんですね。
しかしアーティストも実は、見えないものも表現の射程にいれています。
ですから鑑賞者は、その目に見える情報をきっかけにさまざまな想像を
自由に楽しんですることが出来ます。

この美術館に於けるアートの意味は例えるなら
暗闇のなかに垂らされた、一本の糸のようなものでしょうか。
その手探りで触れた微かな糸口を便りに、見えざる扉へアクセス可能になっています。


今回の展覧会は特に建築とアートをめぐる「刻」の関係に思いを巡らしてみるのも
面白いかも知れません。


大角設計室