大角設計室のブログ

おだやかなくらし。刻が染み込む家をみんなで創ります。

築10年のストーリー

 

家を解体しています。

 

一見すると、建設途中のような写真ですが、

逆です。解体工事の風景です。

 

 

一般的には、住宅の解体工事というと、

おおきな重機で、もっと豪快にグシャグシャと

一思いに壊していくものですが、今回は丁寧に解体することを選択しています。

 

 

手間が、通常の解体方法にくらべて、二倍も三倍もかかるのですが

今回は既存の住宅がまだ築約10年としたところで、急に道路拡幅に引っ掛かり

やむなく住まいを追われる形です。

 

 

 

 

屋根瓦を外し、板をはがし、一本一本、柱や梁などの構造材を

外していきます。

 

そのたびに、この部材一枚一枚。この柱一本一本に

約10年と言う年月でさえ、かけがえのない思い・重みがあったのだろうなと

偲ばれる気がします。

 

 

 

 

そういった事情なので、構造材料は、非常に綺麗です。

 

以前の工事業者の丁寧な仕事が、経年でとても魅力を増しつつある状態で

これを壊してゴミにしないといけないなんて、

住まい手からしたら如何ほどの思いなのだろうと感じました。

 

 

そこで、今回は解体業者と相談しながら

この材料は生け捕りにしてほしいと、幾らかのセレクトをしています。

 

構造材を再利用する時に注意するべきは、まず金銭的なことです。

先程も書きましたが、手間がかかる分コストが割り増しになります。

その割り増しコストと、材料の再費用のコストを大まかに計算しながら

損しないトントンくらいの材料をセレクトしていきます。

 

 

 

 

 

もう一点注意すべきは、解体した際に、傷が入りやすかったりしないかの検討です。

解体の難易度によっては、材料を傷めながら外すことになります。

 

さらに、内部に釘などの金属が埋め込まれて再加工時に支障があるもの、

再使用時の新しい空間で機能的・意匠的に生かすことがイメージできるかを

設計者はハッキリ検討しておかないといけません。

 

 

 

こうして、いろいろ設計者と住まい手が根気強く思い、

それを辛抱強く工事業者が聞いてくれることで、

なんとか、幾らかの材料は再利用される運びとなりました。

 

 

もうじきこれまでの約10年のストーリーに重なるように

新しい材料が加えられた、これまでの・そして・これからの我が家が

じっくりと建ちあがります。

 

楽しみです。

 

 

 

 

ゆあさ

 

 

 

東京と民家

 

東京で新しいプロジェクトです。

 

大角設計室は、じつは東京での仕事は初めてです。

 

お隣の千葉県では、設計した実績があるのですが、

今回のケースは都心ではありませんが

なかなか人口密度のあるエリアで都会感があってワクワクします。

 

 

 

 

近所の蕎麦屋さんでランチしながらミーティングしましたが

さすがのお江戸ですね。

蕎麦がピシッとしてますね。

 

人気店らしく、ズルずら~っと有名人サインの色紙が

ところせまし飾られていました。

東京ですねぇ。

 

 

 

 

さて、無事に打合せも終わって、中央線の電車に乗って

東京の民家を見に行きます。

東京の民家のオリジナルの形や歴史を調査します。

 

 

・・・?東京の民家?そんなのあるの?と思われるかもしれませんが

実はあるんです。

 

都心ではなく、郊外の民家の移築になるのですが、

民家園のような形で整備された公園内にその民家は建っています。

 

 

 

公園内には、古民家だけでなく、明治や大正、昭和などの

代表的な歴史様式を持つ建築や、著名な建築家の設計した家も展示してあります。

 

 

ここは私が大学生だったころ一度来たことがあって

「なつかしぃナァ」と感慨もそこそこに、

「ええ!こんなデザインだったっけ?」みたいに

以前の不勉強だった自分と、今の経験を経た後の自分との視点のズレが

とても心地いい物になりました。

 

 

 

生意気にも、経験を経た自分の視線は

「ココはイマイチ上手くいってないな」みたいな無粋な見方もしがちです。

だけど、今も昔も変わらないなと感じるところもあるのです。

 

 

当時の記憶は細かくは覚えてないのですが、なんというか

「なんだか気持ちのいい空間だった」という空間体験や空間イメージは

脳の奥の真ん中に、鮮明に残っています。

 

 

 

・・東京で木造建築を建てるという事はじつは結構ハードルが高いのです。

法律・コスト・工事難易度・職人などなどの細かい調整が必要です。

でも、そうした細々したコトに囚われすぎては、いい建物は建たないよ、と、

東京の民家が語り掛けているように感じた一日でした。

 

 

 

ゆあさ

 

 

 

 

工事する人。設計する人。

 

群馬のプロジェクトです。

 

現在は図面を描いている段階がだいぶん進み、

もう少しで図面が完成します。

このもう少しからが完成までヒジョ~に、長いのですが・・。

道のりは近くて遠いです。

 

一見するとプランは完成しているように見えますが、

大角設計室はもう一回ひっくり返して考え直すこともしばしばで

最終調整こそが、一番時間を煮詰めてやっています。

 

その秘伝のタレの作り方はまた別の機会にブログに書きたいなと

思っています。

 

 

 

さて今回はプランの打ち合わせと兼ねて

施工してくれる工務店の完成した住宅の見学に行きました。

 

 

 

現場は群馬県の誇る、上毛三山のひとつ、

赤城山をのぞむ長閑な場所にありました。

 

観光地としても有名な桐生の町のちかくで、結構味わい深い

桐生らしい古民家も、ちらほら残っています。

 

 

 

やっぱり桐生といえばソースカツどんですよね。

腹ごしらえしながら、お腹と期待を膨らませます。

 

 

 

 

昼食後、待ち合わせしていた工務店の社長とお会いして

さっそく見学開始です。

 

それではお邪魔しまーす。

 

 


いやー綺麗ですね。

 

丁寧にカンナをかけてある、面取りの綺麗な丸太梁です。

 

 

ホームページや、SNSなどでこういう技量があると

事前に知っていたのですが、やはり実物を見ることが

大切なので、技量は申し分ないなと一安心です。

 

 

 

大角設計室のデザインする家は

工事をする人の力量が高くないと、良い感じで建たない設計になっています。

 

 

家づくりって本来は、工事する人と設計する人の共同作業であるはずなんです。

でも何故だか、

工務店ハウスメーカーは(工事する人が主役の家)になりがちだし

設計事務所は(設計する人が主役の家)になりがちな状況があります。

 

 

その原因は、家を住まい手に供給する(工事・設計)側が

双方を活かす家づくりをしていないからです。

それって、住まい手側からすればたまったもんじゃないと思います。

 

 

家づくりを考えたことあるひとはなんとなく分かると思いますが、

あなたの家を本当の意味で「つくってくれた人・デザインしてくれた人」双方の

顔が思い浮かぶでしょうか。

 

案外、思い浮かぶのは片方だけで、両方は少ないのではないでしょうか。

 

 

大角設計室のデザインは、

つくる時は悶絶するほど大変ですが、完成した暁には

大工さん、左官さん、建具屋さん、電気屋さん等の作り手が

自慢したくなるようなものになるようしています。

 

 

そのため、工事をする人の得意なことは何か、

ストックしている木材・資材はあるか、仕事のクセはどういった物か、

工務店の工事方針、やりやすい方法、つきあいのある業者

等などを建物から読み取り、工務店と話し合いの時間を設けます。

 

 

 

工務店が得意としていることで、私達設計事務所のスタイルと合致するものは

即採用となりますし、

逆に使用したい材料ややり遂げたい技術に多少難がある場合は

どうすればその問題をクリアしていけるかをデザインしていきます。

 

そうして、全国各地で、その土地土地にあわせた

大角設計室のベースデザイン+アルファの住まいが完成していきます。

 

 

 

打合せの最後にお茶菓子をだして頂きました。

 

「ナッカラ」というアーモンドタルト。

 

なんとなくこれを頂きながら、

「いい家にスッカラ。いい家にナッカラ。」

という、工事側からのメッセージを感じました。

 

 

*正確には「なっから」とは群馬弁で「すごい(very)」という方言です。

 

 

なっからな家になっからな。

 

 

 

 

ゆあさ

 

古い家を 残し。活かし。渡す。

 

古い家の再生計画の大詰め段階です。

 

古い家をお持ちの方で、3つの可能性について考えながら

計画を一緒に進めてきました。

 

その三つとは

「このままいっそ壊してしまうか」

「はたまた、壊さずに、再生して、リノベーションなどを考えるか」

「もしくは解体後、新築とするか」

いずれかを住まい手は選択する必要があります。

 

 

どんな選択にも長所や短所があり、

住まい手は自分一人で、あーでもないこーでもないと

長年熟考されてきましたが、思考をまとめるために

設計事務所」と一度、プロジェクトを共創することで

3つの選択肢のケースを可視化(模型・図面・面積・法律・時間・金額等)し

自分が判断・決定する材料を揃えることが可能になりました。

 

 

家を建てる時に、

それも、古い家をなおす場合は特に忘れられがちですが

勘違いしやすいことは、

「正解は1つしなかい」と思い込むことです。

 

 

大きな金額が動くものなので、そう思って

1つの答えをピンポイントで探すことは仕様のないことかもしれません。

 

 

でも、いえづくりって

実は「正解がない」ものなので、

設計者としてこの場合出来ることは

「いろいろな選択肢」を提示してあげることだと思っています。

 

 

 

もちろん、設計事務所としても、

毎回ベストだと思っている案を提案しますが、

いっぺんに最初の段階から「正解」を見つけるのは至難の業です。

 

それも、一般の人が独力でやり遂げるのは大変な労力だと思います。

 

だから、そのサポートを設計事務所がおこなうことで

いままで見えなかった、ゴールまでの道筋を示すことが

出来ると思っています。

 

 

住まい手が、いえづくりにおいて、行うべき思考のプロセスは

「正解を見つける」ではなくて、

 

まず最初に見つけるべきは

「最適化の方法」です。

 

色々なケースを検討し、どのような判断基準で自分は

決断を下し、「正解に近づけていく」ことが出来るようになることです。

 

 

その「最適化の方法」のために、私達設計事務所がお役に建てるなら

これほど嬉しいことはありません。

 

 

 

ゆあさ

 

 

 

 

 

 

プロとの対話

 

事務所の大テーブルにずらりと並べた

住宅の写真カットが並びます。

 

もうじき正式発表があるとは思いますが

雑誌掲載もあるため、入稿に向け写真のセレクトに熱がはいります。

 

大角設計室は今まで、幸いにも素敵な写真家とのご縁が多く

毎回唸るような、素晴らしい写真をいただいています。

 

故に、、、

 

ぜいたくな悩みですが、

絞って考えるのが本当に難しい。

 

大角。おおいに悩んでおります。

 

 

 

でもこうして、他人が撮った写真と言う

自分とは切り離された視点を俯瞰できることは

けっこう次作へのアイデア・ヒントとなります。

 

 

仕上がりが楽しみです。

 

 

 

ゆあさ

配置を検討する

岡山県北での仕事が進んでいます。

 

基礎工事をする前に建物の配置が当初イメージしていたもので良いか

再確認を行います。

 

 

 

再確認の結果、当初予定していたものより大分変更しました。

 

グッと道路側に寄せる配置に変更し、

建物南側を広くし、ゆとりを増やすことに決定。

 

 

 

図面をなおすという事は、大きな手間になりますが

最終的によくなるように、こうして現場が進んでいる段階でも

変更できるタイミングであれば、

大角設計室ではわりあい多くの機会に図面修正を行います。

 

施工者もそれに合わせて段取りが180度変わるので

二重三重に大変なのですが、

まだ見ぬ、よくなる方向性を見つめて工事はすすんでいきます。

 

 

ゆあさ

埋没する美しさと、隣り合わせの風景

打合せのため

山形に行ってきました。

 

プレゼンの一枚目に

「何てことはない、あたりまえの風景の中に、

うっかりしていると美しさが埋没していることに気づかない」と書きました。

 

 

大角設計室は古民家再生の実績が全国各地であります。

全国的に見ても、リノベーションの先駆けで

古民家再生がブームになるはるか前、30年以上前から再生設計に取り組んでいます。

 

 

ブームになる前は、古民家なんて見向きもされないし

地味で、汚くて、ダサいというイメージが一般社会の総意でした。

 

 

でもそれは、仕方ないんです。

冒頭に書いたように古民家の美しさは「うっかりすると見過ごす」類のもの

だからです。

 

 

 

 

でも、不思議ですよね。

何故、それならば、今の人たちは「古民家」や「リノベーション」が

うっかりすることなく、「いいね!」と理解できるのでしょうか。

 

その理由は二つあると思います。

1つ目は、「リノベーションの事例が増え、情報に触れる機会がある」ということ。

いわば、ガイドブックみたいなものですよね。

2つ目は、「古民家再生・リノベーションブーム」という言葉を巧みにつかった空気。

いわば、色眼鏡をメディアに影響されている可能性も考えられます。

 

 

壊されそうになっている古民家が

新しく活用されていくのは喜ばしいことですが、

デザインがなんだか全国各地で一律に平均的になっている気がします。

 

古民家再生・リノベーションが大衆に受け入れられている今の時代に

「分かりやすさ・言葉にしやすさ」という表面的なデザイン、

(例えば「シックイ・古材・瓦・土間」などの)だけで満足せず

その先に潜む

「なんてことのない、本質の美しさを」

設計事務所としては追求して行きたいですね。

 

 

ゆあさ