大角設計室のブログ

おだやかなくらし。刻が染み込む家をみんなで創ります。

小住宅設計

大角設計室の展覧会等でお客さんからよくこう聞かれます。


「ちいさな家は設計しないのですか?」


実際はしています。ので
参考までに期を見てまた写真をアップしていきます。


一般的なイメージでは設計者は、普通の人が住むための家ではなく
特殊な人の為に設計をしているのだと思い込まれています。
それは何故でしょうか?
一つの要因として考えられるのが
残念ながら、建築雑誌に載る家のほとんどは、雑誌映えの良い
生活の泥臭さが微塵も似合いそうにない、
奇抜な家がもてはやされているケースが多い点が挙げられるかもしれません。

そういった世相も相まって冒頭の様な質問になっている気もします。


要約すれば
 
「ちいさな ( ありふれた人が住めるようなふつうの ) 家は設計しないのですか?」
が本音ではないでしょうか。



何がふつうなのかはさておき、そういった点で考えると
僕にとって小住宅の再生工事で思い出深い物件があります。



もともとは借家の様な簡素な建物でした。
自分で図面を描いてはいましたが、事務所に入って日が浅かったこともあり
じっさいどんな風になるんだろうと不安を感じながら
現場に通っていました。

それがなんのなんの
完成に近づくにつれ楽しくなりすぎる程設計の力を再確認した
楽しい現場でした。




 



玄関です。ホンの僅かですが色々仕掛け(設計)があり
快適で、美しい空間になりました。

具体的には、最初の土間写真右の窓の高さが2メートルより少し大きいこと。
中央の柱が既存の建物の位置ですが、それよりも右側に僅かに大きく増築したこと。

その他にもありますが、上記2点がささいなことですが、小さな住宅ゆえに
大きく空間の質に関わってきています。





そして、平屋の建物だったので3部屋が間仕切の建具(引戸)をつかうことで
ワンルームに早変わりするように考えました。




その空間を何気なく成立させているデザインの鍵は
写真左に見える太い柱です。
説明は省略しますが、ほんの僅かな設計の違いで
ここまで空間が甦るのか!と再確認しました。


このプロジェクトで考え、確認したことは
何も奇抜なことをしなくても
当たり前のことを当たり前に設計し、ささいなことも大切に
集中して設計していけば、こんなにも豊かな建築になりうるのか!
ということです。
翻って、全ての (ふつうの) 人の家は美しさへ導くことができる筈です。
そういうスタンスで設計をしていきたいなと思います。

ほんの僅かなことに気づけるか。
「建物への気づき」は現在も修行中なのです。


ゆあさ