大角設計室のブログ

おだやかなくらし。刻が染み込む家をみんなで創ります。

建物をなおす仕事

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スライドレクチャーを先日倉敷で行ってきました。

 

「保存・再生」工事にまつわるテーマで、当日は全国各地から

設計・工事に携わる方が岡山県の倉敷に集まり、

保存再生工事の事例がたくさんある倉敷市美観地区を訪れていました。

 

 

倉敷市美観地区にある和菓子屋さん

「廣榮堂倉敷雄鶏店」の設計監理をした経験を

少しだけ、お話してきました。

スライドをしたのは再生後の廣榮堂倉敷雄鶏店二階です。

 

 

スライドを作りながら思ったのは、

「いやぁ~、腰が抜けるくらい難工事だったんだナァ」と

改めて、古い家をなおすという事がいかに大変で

でも、出来た後は、その苦労も吹っ飛んでしまうくらい

喜びの大きい仕事なのだという事です。

 

 

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久方ぶりに尋ねたお店は

あんなにボロボロに傷んでいたのがウソのように

何事もなかったように

大勢の人に楽しんで使っていただいていました。

 

その美しくなおった建物をみて

「おまえさん、よかったねぇ」とかつての建物に話しかけてみます。

 

 

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レクチャーが終わった後の現場に一人佇むと

 

私たちが新たに加えたり、直したりした、天井や壁や柱一本一本に至るまで

数多の物語があったことを思い出します。

 

と、同時に、この建物を建てた100年以上前も同じだけ、いや、

現在よりも「家を建てる」と言う行為が全て人力で賄われていた時代の方が

切実なストーリーがあったのだろうという事が偲ばれます。

 

 

 

未来に「確かさ」が見えず、5年後10年後がどうなるかわからず

不安になる人が多い現在ですが

100年もの時間が「確かにここにある」と、じんわりと感じられる建物は

幸せな空間なのかもしれません。

だからこそ、今の時代の人の心を打つのかもしれません。

 

 

そうした空間が手にできるのは

「古い建物をお持ちの方の特権」ですし、

そうした建物をなおす技術を持つレベルの高い技術者

そうした建物の魅力を引きだすことが出来る設計者の

協力が不可欠なのだろうと思います。

 

 

古い建物が、さまざまな理由でなおすことが適わないことは

多々あることは現実ですが

一度検討してみるのは悪くないのかもしれません。

 

その時は是非一度、私達にご相談いただいたり

私たちの再生後の建物をご覧になっていただければと思います。

何か、理屈ではない何かが、建物から感じられるのではないでしょうか。

 

 

ゆあさ