大角設計室のブログ

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かべつち


空をとぶ飛行機。

11/15以来の再生工事更新です!  →記憶を呼び覚ますためクリック これまでの再生工事おさらい


さて前回は屋根の鉄板を葺き替えたところまでご紹介しましたので、
今回は「壁」がブログのテーマとなります。


壁について考える

そもそも壁は住宅においてどのような役割を持っているのでしょうか?
上の写真は、壁を付ける前の状態を撮ったものです。
壁が全くないと言うのも空間として魅力的なのですが、
生活をする上で、空間を間仕切る必要や
耐震性を高める為に壁が必要になります。


壁の中身

それでは壁土の中身がどうなっているか確認してみましょう。
現在の住宅ではそもそも壁土が無い場合がほとんどですし、
壁の中が空洞である事が多いと思います。

古民家は骨組みまで美しいなぁと、解体時いつも感心します。

古い民家の壁土を落とすと2センチ厚位の木材が出てきます。
貫(ぬき)と呼ばれる柱と柱を繋ぐものです。
どうやって繋ぐかというと柱の中心に穴をあけ
その穴に貫を差し込み、柱の横からどんどん文字通りつらぬきます。
最後に柱と貫の隙間にクサビとよばれる三角の材を
ストッパーとして入れたり釘を打つ事により固定されます。

新しい柱にも同様に、貫を通すための穴をあけ、柱と柱を繋いでいきます。
最近では、貫工法とよばれるこのやり方は、一般的な住宅では
ほとんど見られなくなりました。
現在は筋交いと言う斜めの材や構造用合板を入れる事により
地震に抵抗するやりかたが主流になっています。

貫工法は、地震に抵抗する時木材の持っている粘りを最大限活かし
地震の力を建物を揺らす事によって力を逃がし、倒壊を防ぎます。
ゆえに、部材同士を繋ぐのは凹凸に加工した木材を組み合わせます。

一方、筋交いや構造用合板は地震の力によって建物が変形するのを防ぎ
力に耐える事を目的にした考え方です。
もともと木材は鉄やコンクリートに比べるとやわらかい素材です。
その為、ガッチリと固定する為に金物をたくさん使用する必要があります。



貫工法から学ぶ



江戸時代から現存するこの建物は貫工法で建っている訳ですから、
貫工法から学ぶべきことは多いと思います。
棟梁達と話をすると本当に昔ながらのやり方だと、貫の厚みはとても厚いものを使うそうです。
そうすると、本当にがっしりとしたものになり、地震に強い壁が出来上がります。
しかし、貫を厚くすると工事手間や、様々な問題がおこります。


貫工法の手間


柱に穴を空けるわけですから、柱は必然的に太いものを使う必要があります。
しかし現在の一般的な住宅はとても柱が細くなっており、厚板の貫工法には適しません。
大角設計では、柱や貫を太くする事によって、貫をしっかり効かすことにしています。
また、貫の本数を増やす事によって、耐震性が増しますが、
柱一本一本に貫穴を空ける手間がかかります。
細い貫穴だと、現存する貫穴を空ける機械は一発で空きますが
太い貫穴だと、機械で穴をあけた後、もう一度穴が大きくなるように穴を広げる手間がかかります。


まだほかにも理由がありますが、
「耐震性」を理由に筋交いや構造合板が貫構造のかわりに主流になったと言われていますが、
「手間やコストが必要以上にかかる」というのも、貫構造があまり見られなくなった理由ではないでしょうか。





次回は貫構造が見られなくなったもう一つの理由についてブログを書きたいと思います。
上の写真は次回予告写真です。お楽しみにお待ちください。



ゆあさ


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