大角設計室のブログ

おだやかなくらし。刻が染み込む家をみんなで創ります。

土壁のアク

事務所の玄関には、絵を掛けてある土壁があります。









注目して欲しいのは、
ビートルが急ブレーキをかけた事ではなくて

「土壁」の方です。




土壁の文化


クローズアップしてみると、
土の粒子や、かすかな凹凸。藁を切って小さくし混ぜられたスサ。
実に味わい深い素材感があります。

竹を編み込みそれを下地として荒壁をつけ、
色粘土に砂や藁を混ぜ合わせてつくった材料を塗って仕上げる工法は
壁の作り方の基本形として世界中にありますが、
土・砂・スサの粒子や表情にまでこだわる繊細な土壁は
日本人の感性により高度に洗練した、日本独特のものだそうです。


事務所の壁土は
真っ黒になった部分と、塗った時と変わらぬ色合いが同居しています。
真っ黒になるのは土壁のアクが表明に浮かんでくる為です。
何故か、絵を掛けていた場所にはこの土壁のアクが発生しません。

こういった特性を利用した壁があります。
湿気の多い時期に、鉄分を少し混ぜた壁土を塗ると
鉄分がぽつぽつと斑点状に浮かび上がります。
こういった「サビ」が浮き出た壁仕上を
「蛍壁」と呼んで風情を楽しんだそうです。



時が染込んだ質感


最近はあまり土壁を塗る家がありませんから、
お施主さんからよく「カビ」なので、取り除いて欲しいと
言われる事がありますが、
そういった現象は「土壁の良さ」と感じていただけると嬉しいです。
その言葉の意味を知る為に、是非有名なお茶室に行かれる事をお勧めします。


国宝の茶室等の壁は、明かり取りの窓が小さい為
もともと暗闇の空間なのですが、
壁土もおどろしいほど真っ黒に染め上がり、空間と仕上の相乗効果で
質感の極みを感じます。


紅葉の時季ですが、季節外れの蛍が
茶室の暗闇に舞っているかも知れません。


ゆあさ