大角設計室のブログ

おだやかなくらし。刻が染み込む家をみんなで創ります。

棟上げ直前

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いつもより多めに回しております。


とは、写真左隅の扇風機のことではなくて
染之助・染太郎師匠の傘を回しながらの名台詞。


傘を開いたような構造のこの空間は
くるくる多めに回っている感じがするようになりつつあります。
壁や照明、内装が加わってくると
今以上に多めに回す事になると思います。楽しみです。


傘は、雨を受ける布の部分と、その布を受ける華奢な骨で出来ています。
そのシンプルな力学的に無駄の無い構成は
視覚的に重さを消し去る効果があるように感じます。
その効果を利用して、あの曲芸はスピード感や軽快さ
重いものをキャッチする瞬間のスリル等を効果的に生み出しているのでしょう。



今日の主題はこの建築の「骨」です。





建築でも骨組みと呼ばれる部分があります。それは
構造を支える、柱や梁、土台と呼ばれる部材です。

「棟上げ(むねあげ)」「上棟式(じょうとうしき)」という言葉は
皆さん馴染みがあるかと思います。

建築の骨組みを組上げた状態で、
工事のこれからの安全を神に祈願・感謝する行事です。



この時、骨組みが美しいかどうかは
建築の本質に迫る問題です。


まず、自然界のお手本に目を凝らしてみます。
渡り鳥の骨等は長距離を移動する為のパワーと軽量化を実現しており
それだけでも驚異ですが、とても美しい形をしています。
しかし、普段私達はその骨を見ることはできません。
しかし、その骨格が渡り鳥の美しさを形作っている事に疑いの余地はありません。

つづいて人工物のお手本にいきましょう。




古い民家を探しに集落に出かけて行くと
朽ちかけて、屋根が落ち、壁土が雨に打たれて柱がむき出しになっている
状況によく出くわします。
いわゆる上棟式の時と同様に、骨組みだけが組み上がった状態です。
それを見た時に、その骨組みの美しさに気づきます。

世界遺産であるパルテノン神殿は廃墟の遺跡です。
石の柱だけが残っている、いわば骨組みだけの構成ですが
その美しさが世界の人々を魅了します。




「建築は廃墟になった時、その光を増す」とは
よくいったものですが、要約すれば
骨組みの美なのではないかなという気がします。

多くの場合現在の建物では
骨組みは、壁や天井のなかに隠されてしまう事が多くなりました。
しかし、それは元来空間と関係性をもった美しいものでした。

棟上げは、人が自然の材料を利用してつくりあげた
美しい構造物をゆっくり味わい知る為の時間なのかも知れません。


そして、その構造美を考える事こそ
創造的作業が出来る瞬間であり、設計者の力量が試される仕事です。


次回から棟上げは
いつもより、多めに見てやってください。


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ゆあさ