大角設計室のブログ

おだやかなくらし。刻が染み込む家をみんなで創ります。

再生工事の仕上工事で大切なこと


今日もそらをのびのびと飛行機が飛んでおります。

再生工事更新です。約一ヶ月ぶりですね  →記憶を呼び覚ますためクリック これまでの再生工事おさらい

この現場についての再生工事シリーズは日々現場で感じていることを
自分の中で整理しつつ書いてきたので、更新に時間がかかっていたのですが
ようやく工程的に仕上の段階に入ってきました。
あと残すところ最終回でこのシリーズを完成させる予定です。もう少しおつきあいください。



さて前回までで工事は、大工さん→左官さんへとバトンが渡され塗り壁が仕上がりました。
ここまで建物の矩体(くたい)部分が仕上がっています。
矩体とは人間の体にたとえると骨組みのことで、強度に関わる箇所のことです。

次はいよいよ仕上工事です。


仕上工事

具体的な工事の内容は、タイルを貼ったりキッチン・浴室等の設備機器の搬入
照明器具の取付け、ロールブラインドの取付け、建具工事等です。
これまで長い時間をかけて、慎重・丁寧に再生をおこなってきましたので
ここでもまだ気を緩めることが出来ません。



印象を決定付ける


この工程に入って初めて、
施主の方もこんな風な空間に変わっていくんだ!
と本当に理解出来るようになります。
今までの工事工程はどちらかというと施工業者しか見ることの出来ない
建物の下地部分の話でしたが
今目の前で行われている工程は





照明器具や、浴槽・トイレなどの設備機器等
圧倒的になじみのある風景です。
この部分が一番カタログやCMなどで
住宅購入者に刺激的に情報が与えられていますから、いわゆる
描いていた夢のかけらが眼前にあらわれます。
一緒に家つくりのパートナーとして頑張ってくれている施主さんの
テンションが駆け上がる瞬間で、家づくりの最も楽しい時間の一つです。




しかし、設計者にとっては緊張の連続でもあります。
今までの工程でいくら頑張って来ても
タイルの色やタイルの目地の色、目地線のズレ
照明器具の高さ、コンセントの位置等がわずかにずれると
驚くほど空間の雰囲気が変化します。
それぐらい設計・デザイン力が問われる最も楽しく、最も緊張する現場指示が続きます。

男前なのにステテコをはかしてしまうのか。
美人なのに靴下に穴をあけててズッコケルのか。




再生に相応しい仕上



仕上材は骨組みと違い自由な気分で選ぶ事が出来ます。が、
再生する民家がまとう時間を経たデザインはちょっとやそっとじゃ太刀打ち出来ません。



例えば黒光りする丸太一本を見てみても、何ともいえない魅力がまとわりついています。
とても軽い気持ちでデザインしてしまうと、民家の魅力を引き出すどころか足をひっぱってしまい
空間の質を下げてしまいます。

民家の魅力を如何に引き出すデザインをできるか。その為の仕上は何か?
デザイナーの小手先のテクニックは民家の魅力に呑み込まれます。
自由だからといって自分の好みだけを頼りにデザインすることは
多くの人の共感を呼ぶ美しさにはつながらないかもしれません。
そのことを本当に設計者は肝に銘じなければいけないと思います。


民家は何代にもわたって受け継がれ昇華されたデザインの宝庫です。
そのなかには古さや新しさとは関係のない、現代でも充分美しいと感じる
不易のデザインがあります。
願わくばそのようなデザインをさらに昇華させていくのが今後の課題です。
今日も古民家との真剣勝負がつづいています。

次回いよいよ竣工、最終回です。→最終回へ 再生工事の魅力と難しさ




ゆあさ