大角設計室のブログ

おだやかなくらし。刻が染み込む家をみんなで創ります。

焼杉板

焼杉ブーム

ここ数年のうちに岡山の民家では当たり前だった壁の仕上「焼杉板」が脚光を浴びています。
読んで字の如く「杉板」の表面を「焼いて」炭化処理した板の事を言います。
ちなみに今日の写真は事務所近所にある一般の民家です。設計した物件ではありません。




大角設計室ではブームになる前から使っていたわけですが、
(というより民家では当たり前の素材ですが)
建築専門誌でも、東京の有名な建築家がポツポツ使い始めると
特に都会の建築家の人気に火がついたようです。


人気の理由は、つるつるピカピカした素材に慣れていた都会の建築家にとって
ザラりとした漆黒の艶やかな質感は物珍しかったのだと思います。
自然素材回帰の社会的背景とも合致したのでしょうし、耐久性も優れています。


焼杉板の民家の本質




しかしながら、焼杉板を使っとけばオッケーみたいな
建物が増えているような気もしています。
一般誌にもネットにも焼杉板の情報が溢れかえっています。

焼杉板とは一概にいっても「本焼き」「機械焼き」「薬品を塗っただけ」等の
ランクがいろいろあります。 板幅も違えば、板の厚みも全然ランクで違います。
板と板との間を目板と呼ばれる小さな板で押えて止めるのか、目板無しで止めるのか。
最も大事な木の表面、炭の層の厚みですらあまり知られていませんがランクにより性能に雲泥の差があります。


どのランクの材料を使ってもいいと思いますが、適材適所に使って欲しいと思います。


もっと欲を言えば、焼杉板の美しさは
民家を見ていただけるとよくわかるのですが、板だけが美しさを形成しているのではありません。
焼杉板と石の関係や、屋根の素材との相性。窓や開口部との高さのバランス等々。
設計者が、材料の本質を理解しどこまで美しさを引き出せるかがもっとも大切な事ではないでしょうか。
焼杉板を貼っただけで家がいきなりかっこ良くなるわけではないのです。民家は奥が深いのです。



ゆあさ