大角設計室のブログ

おだやかなくらし。刻が染み込む家をみんなで創ります。

外部を内部化する


山形の民家を見てきました。
今日はその時感じた事について書きます。


生活する上で、人間は「うち」と「そと」を使い分けます。
用途によってその二つの領域を使い分けるわけですが
それに従い、「うち」はより人間らしい生活に合わせ
柔らかい素材で構成されます。たとえばフスマや障子、畳などですね。


「そと」は人を外部環境から守る為に多少強固な素材で構成されます。
たとえば土壁や、板の壁。漆喰壁、石などですね。



基本的にそのような「うち」「そと」の一般認識があります。
そのため、この山形の民家を見て
なんだか???って感じませんか。
自分の住んでいる家の写真で、こんな感じになる場所がありますか?
なんだかちょっと重々しい。


一般的に「そと」を構成する外部の戸の内側は「うち」を構成する柔らかい素材であるべきなのに
ここでは、内側の領域にも「そと」の素材が選択されているんですね。
言い換えれば、外壁が二枚あるという事です。
なぜそういった構成になるかというと、山形の雪深い土地柄
蔵が寒さや雪で傷まないように、蔵をすっぽりと外皮で覆っています。
屋根は二重にかさねて、外壁は蔵の漆喰壁+板戸となっています。





【津山の家】大角設計室設計

大角設計室では、そのような民家をヒントにデザインしている家が幾つかあります。
インテリアに外部空間を上手く取り込む事で、民家らしい重厚さのある空気感や
「うち」「そと」の区別のつかない、曖昧で開放的なんだか内包的なんだかの
特殊な空間が生まれます。


昨今の現代建築雑誌によると、
室内を土間にして観葉植物をたくさん置いたり、木を室内よりに植えてみたりするのが
トレンドみたいですけど、きっと同じような狙いなんだと思います。


しかし、気を付けるべきは、
単純にそれらの「そと」のデザインを「うち」側で使えばよいわけではないと思っています。
記号的に「そと」を扱う前に、「そと」の意匠がうまれた背景を理解しようとしないかぎり
本当の住宅文化は発展しないんじゃないでしょうか。

アリバイ程度に使っているデザインは本当にしらけた感じになります。
昔から昇華されてきたデザインが死んだ状態で使われている様を見ると本当にがっかりします。




もう一度最初の民家の写真を眺めてみて下さい。

家を建てると言う切実さが
後世にうまれた僕にも痛い程伝わります。

みなさんはいかがでしょうか。



ゆあさ