再生工事が進んでいます。
新築工事と違い、再生工事の現場はややほの暗いのです。
工事が始まる、その最初から、既存の屋根や壁に囲まれた独特の雰囲気が
工事室内を落ち着いた、
悪く言えば、ほんのすこし、どことなく陰気な雰囲気を醸します。
再生工事は建物がある程度年数を刻んでいることが
この家とは無縁だった我々工事者に影響しているのかもしれません。
「一概に古い家をなおす」といっても
大角設計室の多くの工事で行われるように、
建物を骨組みを残して丸裸にする現場はそうはありません。
暗く、重く、じっとりとした、
瓦屋根や土壁、埃っぽい畳床が取り払われる時
外部と室内が、再生工事ならではの黒い光が差し込むこの瞬間が
たまらなく好きです。
外部のカラリとした明るさと
室内のじんわりしたほの暗さが
この古民家本来の美しさのアウトラインを教えてくれます。
この黒い光を眺めながら
建物本来の美しさを引き出す
最終デザインを調整します。
工事中は、住まい手ではない私自身が
いわば、この家に住んでみる瞬間でもあります。
この家の歴史を感じ
この家に満ちる光を感じ
この家の窓から見える風景をおもい
この家に住む喜びを創造する。
民家や、職人たちの技や言葉は
多くのデザインのヒントを私に教えてくれる
規範となっています。
ゆあさ