大角設計室のブログ

おだやかなくらし。刻が染み込む家をみんなで創ります。

「モダン」と「モダンさ」の差


住宅の中であまり目立ちませんが、印象を決定付ける
重要な要素。それが「屋根」。

一般的に素材や色、性能が注目されがちです。

今回は瓦という素材が選択されており「いぶし」といわれる色を採用しています。
大体の場合この素材と色がわかれば工務店は屋根を作ることが出来るわけで
概ねほとんどの住宅程度の建築現場では設計者の指示は終わります。



屋根がテーマになる事の多い大角設計室。
伝統的な民家から学び、現代的にそのモダンなエッセンスを抽出するとき
「屋根の美しさ」は外せない要素です。

民家の屋根はかわいらしく、どこかユーモラスな形状をしています。
それは、ややふっくらと丸みをおび、少し厚めの形状から受けとれる印象です。

大角からは「ふっくらだけど、カッチリした感じに」しなさいと
指示を良く受けます。



先ほどの大角の指示は、
「民家のおおらかさを残しながらもモダンな感覚を残す」為に必要なことなのですが
一見、矛盾しているようにしか聞こえませんよね。
「ふっくら」と「カッチリ」って。丸いけど四角みたいなナゾナゾですよね。


ですが、美しい民家を何軒も何軒も見続けて、何となく言葉の意味が分かってきます。


なるほどナァ〜と。

その矛盾を成立させる為に、素材や色もさることながらかなり細やかな指示を出しています。
特に上部の瓦が整列した写真で、おやっ!?と感じられればかなりの瓦通。


瓦などでモダンさを出す為に多くの設計者が行う事は「引き算」です。
伝統的な瓦葺きはとかくコテコテしてますから、それらを省略または簡略することで
「モダンさ」を表現します。
昔のやり方と目に見た形で違うわけですから、判りやすくモダンです。



大角設計室は、その感覚とは少し違います。
先述の民家のふっくら&ユーモラスさは「モダン」を隠した美しさがあるのです。
このモダンは「永遠のモダン」といえるものであり
時代によって移り変わる「モダンさ」とはかなり意味の違うものとなります。

永遠のモダンは「簡単には見え難いものです。」

簡単に歴史に積み重ねられたものを削ぎ落とす方法ではなく
受け継ぎながら昇華して行くプロセスが「ふっくらだけどカッチリ」という言葉に
現れている気がします。

文章を書きながら「民家をベースに考える」ことは
なんと大変で楽しい仕事なのだと考えさせられます。




庶民的だけど、ゴチソウ。
そんな矛盾に満ちた大切なことを教えてくれる、
「ちくりん」のBランチ。
形式を変える事無く突き抜けたものに出会うと感動しますね。

そうか、僕はまだハンバーグの本質が判っていなかったんだと。


個人的にはオムライスもオススメです。


ゆあさ