大角設計室のブログ

おだやかなくらし。刻が染み込む家をみんなで創ります。

均質と反復を超えて


(工事中のテラス)

建築にはモデュールと呼ばれる規格寸法が用いられます。
この規格寸法が意味するところは、概ね二つ。

一つ目は、人間にとって塩梅のいい寸法が経験的に見いだされ
それに沿った寸法体系が建築に導入されているということ。
分かりやすくいうと「起きて半畳、寝て一畳」のようなことですね。


二つ目は、建築はだいたい複数の職人さん、材料屋さんなど
他業種が共同でつくりあげるものですから、家づくりの中で
ある程度ルールを決めておかないと、往々にして間違いが多発します。
例えば、ある程度柱の間隔が一定であるならば、
電気屋さんも、水道屋さんも、材料屋さんも、
ある程度想定した長さを把握しながら工事前に準備が可能です。
頭の中で図面が理解しやすいんですね。


この二つが合わさって規格寸法が決定され、
流通する事で家を大量に供給する事が可能となりました。



(奈良・法隆寺の回廊)

日本に現存する最古の木造建築である奈良、法隆寺
既に、現在と同じような寸法体系で建築が出来上がっています。
一定間隔で柱が整然と立ち並ぶ回廊やお堂は
リズミカルで美しい空間をつくるのに規格寸法が一役かっています。



しかし、この規格寸法をあやつる事で、
日本の建築が劇的に美しい建築をつくり続けて来たかというとそうではありません。



(ありふれた新興住宅地)

例えをあげるなら、日本全国で見られる住宅地。
整然と、整然すぎる程に整然と。
ある意味、無表情な風景です。


新興住宅地だけでなく
伝統的な町並み、と言われる場所でも、昨今では同じような
風景が見られるようになってきました。
同じような、格子、同じような漆喰塗壁、同じような瓦。
同じような無表情の「伝統的」という名前をつけられた
急ごしらえの町並みが、日本全国に溢れ出しています。

知った風な顔で、この格子をつけとけば、とか、
同じように漆喰塗っとけば、とかで安心しては、
本当に美しい町にはなりません。




同じルールを使いながらも、美しくなる建築と風景。

同じルールでありながら、美しくない建築と風景のあいだには
どんな違いがあるのでしょうか?


その問いについて考える為に、もう一度法隆寺を見てみましょう。





法隆寺大講堂)


分かりやすく、左右対称なデザインとなっている
法隆寺・大講堂を見てみます。
同じリズムを生み出す、瓦、瓦を支えるタル木、
太くどっしりとした列柱。

モデュールに則った、
反復的なデザイン。

一見すると、すべてが均質なデザインになりがちなのですが・・・・




よく見ると、瓦の色にムラがある事に気づきます。
よくよくみると、瓦の棟の部分のノシ瓦と呼ばれる平積み瓦の部分もムラがあります。
よーく見ると、瓦頂部のナナメに反り上がる曲線も
複雑に曲率を変化させている様も見てとれます。

でも全体的にぼや〜っと、見ると
全てが調和の内に、もっと言えば、均質なリズムの中に納まっています。

そうしてながめていると、実はそこかしこに
不均質な美が隠されている事に敏感な人は気づくハズです。




(宮城県にある古民家の和室)

そもそも、人は整列しているものを美しく感じやすい性質があるため
また、整然としたルールのもとでは全容を把握しやすい性質があります。

そのため、人は均質な空間を拠り所として建築や町を作りがちです。

でも、ほんとうは、
均質と反復を超えた、その先に美の本質が隠されている気がします。

この障子だって、均一に光っているように見えて、
じつは、陰影をもったムラっ気のある
ボンヤリした光だから美しいのでしょう。

そういった様子を美しいと感じるのは
中国から入って来た木造建築の様式を日本風にアレンジした
日本独特の感性のような、人類共通の感性のような。不思議な感性だと思います。

漢字というカッチリした文字を「ひらかな」に崩す、いわばムラのあるリズムを生み出す。




そんな「ムラ」のある天井にしたいんだと棟梁に話してみました。



いつものように苦笑いの後
「まー、やってみますか。」
と一言。



そうして、
均一に見えて、ランダムなリズムをじつは刻んでいる
素敵な天井が出来ました。





どういった状態が成功かというと
「整っている」ことよりも
「ランダム」である事よりも先に

「美しい」という感覚が先に来る事が大切です。

その感覚に到達することが出来る唯一の方法があるとすれば
気の遠くなるような職人さんの仕事量と
圧倒的な技術力こそが
均質と反復を超えて本物の民家に近づけてくれると実感しています。


あからさまではなく、
ほんのり気づく建築の素晴らしさ。
ほんのり春の味。
現場近くのお店「ぶなの森」のふきのとうピザ。


ホロにがごだぁ〜


ゆあさ


                                                                                                                      • -

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