大角設計室のブログ

おだやかなくらし。刻が染み込む家をみんなで創ります。

四寸とか五寸とか

この建物は古いものの質感と、
新しく付加される機能や物質が
どのようにバランスするかを慎重に考えています。



特に心配していたのが天井です。
既存の天井板があれば問題なかったのですが
解体時に処分されてしまい、新たな要素として検討しないといけません。
既存の力垂木が非常に細かい間隔で入っており
テキトーに板を貼ろうものなら、
天井付近に充満している美しさが死にます。間違いなく。



古い民家を甦らせる時に大角設計室が大切にしていることは
古い要素に新しい要素が加わる事で
両方の要素が相乗効果で美しさを獲得できるようになることです。

特に今回のプロジェクトはもともとの木の力が強い。
経年による質感が圧倒的です。
美しさに加え、木が太い。

こうなると、現在流通している木の大きさでは
何をやっても、「とってつけた」状態になりやすくなります。
この太さにどう反応し、活かすのか。
それが、テーマです。




宮城にはそんな木の太さを美しく活かした建築があります。

高蔵時阿弥陀堂
人っこひとりいない寂しい場所で
約900年もの時を耐え、私がこうして対峙出来る日をむかえることは
結構感動的です。文化とはなんと儚くも強いものなのでしょうか。

静かに佇む美しさは、いわゆる現代の美しさとは
また質が違います。



1177年。平安期にこの建物は建立されています。
同時代によく見られる繊細で華美な阿弥陀堂ではなく
むしろ異端といえるほど、木は太く、
見た目は大変簡素な美しさをたたえています。





ではどこで、美しさを生み出しているのかというと
実用美からくる要素と各部材の絶妙な大きさの調和。
さらには、各部材の大きさにあてがわれた無理の感じられない(「無理のない」ではなく)
軒の出や高さといったプロポーション


説明は出来るのだけれど
すればするほど野暮になるような美しさ。


こんな美しさは現在のような消費社会には適合しないかもしれません。
口を開けば、住宅会社はウチは4寸柱を使っていますだとか
自然素材を使っていますだとか、ソーラー発電が標準装備です。というきまり文句があります。
言葉に還元できる=お金に還元しやすい。
という図式。そういった要素はデザイン以前の問題であって
それだけを考えることは、美しさとは本質的に無関係です。


これからの時代、
のぞむらくは「住まい手」も「作り手(特に設計者)」も
言葉にならない価値観を共有していければいいなと思っています。
そのために、
その言葉にならない美しきものの存在を知る為に
古い建物が日本に残されているのではないでしょうか。




「おでん三吉」
バランスが秀逸。ニラタマでりしゃす


野暮はいいっこなしで。


ゆあさ



□このブログ前回まで →その街の建築へ□


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