大角設計室のブログ

おだやかなくらし。刻が染み込む家をみんなで創ります。

月をさす指

全国各地を旅するように仕事をするようになって久しいですが
旅先では当然、初めて知ることが満載で、とても良い経験をさしてもらってます。

この日出会ったのは美しい風景。「月山」。
もうね、名前にシビレマした。

月に山とかいて「ガッサン」。いいでしょ?gassann。


月山は、山形県の中央部にあり、出羽丘陵の南部に位置する標高1,984mの火山。
山域は磐梯朝日国立公園特別区域に指定され、日本百名山、・・・・・
・・・ほうほう。なるほど。
こうして感動が、知識となり、経験となって次のデザインの種になります。

こういった時に大事なのは「月山」そのものではなくて
月山を取り巻いている環境や、月山がもたらす豊かな風恵です。
そう言ったものは、ヒューマンスケールで現地に立って深呼吸してはじめて
わかることも多い気がします。
知識だけが先行してしまうと
月をさす指の、指先だけを見てしまいがちですからね。

月をさす指は「指月の喩(しげつのたとえ)」とも呼ばれる仏教の言葉です。
「月だ」と月をさす指は、あくまで人の指であって月ではありません。
惑者は指を視て、月を視ず。です。

とはいえ、その指がなければ私たちは
月の存在に気づくことすら出来ないかも知れません。


それはデザインする行為にも似ています。
デザインはデザイン(指)そのものよりも
その先の本質(月)が大切なのと同じといえるでしょう。




・・・まぁ、月という言葉で話がそれてしまいましたね。
話を戻します。



そんなこんなで民家に到着。
初めて見るその様子に、ただならぬものを感じますが・・・


そのまま実測をして現場を離れます。

・・・・でも確かに初めてみるのに
なんだか見た事あるような・・・



・・・!
そうか、この本に載っていたやつだったのか・・・。

僕たちが仕事で再生する民家は基本的に個人の持ち物ですから
一般的に公開されている訳ではありません。故に
初めて拝見する家が99.9%な訳です。

でもこの家は昔に発刊された「日本の民家」の本に掲載されていたお宅だったようです。





蔵座敷綺麗だったですねー。
東北の蔵の中には畳を敷き詰めた客間が作られた文化があります。
西日本では先ずお目にかかりませんね。

綺麗すぎると言ってもいいくらい、
写真掲載時から美しさに磨きがかかっていました。
御当主が心血をそそいで、守ってこられた空間であることがわかりました。



雑誌ではわからない美しい箇所も沢山ありました。
建築は伝搬するのが大変難しいメディアです。
でもだからこそ、SNSのようなライトなつながりだけでなく
感動的な深い経験ができる数少ないメディアなんだろうとも感じる一日でした。


紙面では魅力が伝わらないと言っているのではなく、
「わかった気にさせてしまう」側面が雑誌・TV・インターネットメディアにはあり
多少簡略化してつたわってしまう恐れがあります。


建築は先ほどの「指月の喩え」のように
その奥につづく、美しさが見えて来る(ハズの)面白いメディアです。
そう全国の風景や民家が教えてくれている気がします。



実際の大角設計の建てる空間にも
そういった深みある本質的な空間を染み込ましていきたいと思っています。



ゆあさ