大分県にやってきました。
設計のコンペがあって、最終審査まで残ったので
プレゼンをしに、のこのこ岡山県からでっぱってきました。
私たちの事務所の実績が、各地方のお役に立てればと
全国各地を訪れています。
プレゼンは、毎回試練です。
依頼主の価値観と、設計事務所の感性がピタリと合わないと
いけないのですが、相手方の要望をくみとる方法をいつも模索しています。
設計事務所によってプレゼンスタイルは様々です。
ヒヤリング云々関係なく、事務所のスタイルを100%主張する。
そのスタイルを気に入るか、どうか、は相手が最終的にジャッジします。
逆に、
ヒヤリングを丹念に行い、相手が求めていることを先回りして
相手に合わせたスタイルに変化させて提案する。そんな設計事務所もあります。
一見すると、
「ヒヤリングを丹念にする」ことが当たり前
のように聞こえると思います。
逆に考えると、
設計事務所が自分勝手に案をつくるなんてケシカランと感じられると思います。
でも、単純にヒヤリングをすれば良いかと言えば、
「そうでもない」と、思えるのです。
何故でしょうか?
そう思える理由は2つあります。
(いくら声を聴こうとしても・・)
一つ目の理由は、
依頼主が「100%正確に希望を言語化することは不可能」だからです。
考えてみれば当たり前ですが、意外と忘れがちなポイントです。
たとえば例を挙げると
「自然素材がいい。」という依頼主の希望を叶えるために
設計者が、「木製建具」を採用したとしても「隙間から僅かな虫が入ることも嫌」という「希望と現実の相反する要望」も存在します。
ですから、設計者に求められている本当の能力は
「言葉にはしていない気持ち」がどこにあるか掘り当てること。
もしくは
「言葉に出来ないほどの暗闇(何が欲しいのかわからない状態)」に
新しい提案や価値観で、方向性を明るく照らしてあげることです。
二つ目の理由は
大角設計室が創ろうと思っているものが、おそらく
依頼主の方のまだ「見たことのない」ものだからです。
大角設計室の提案するデザインは、「民家をベース」に考えていますが
そこに現代の価値観や機能性、デザインをミックスしていくものなので
世の中に存在してみないと本当のトコロどうなるかは、依頼主には分かりづらいと思います。
加えてプレゼンには時間も紙面制限もあるので実は伝えたい事を
「切り取って伝える」という事を行わざるをえませんが、本当は
「切り落とされた部分」にも価値があると知って欲しいナァといつも思います。
そこが、「設計事務所」という職能が存在する価値であると言えると思います。
でも「声なき声を聴け」だなんて、
さらに「言語にならない価値を伝える」だなんて、
設計すること、さらに言えばファーストプレゼンは本当に難しいです。
そんなことを考えながら、言語不能な美しさをもつ国宝「富貴寺」を見学。
この美しさ。静けさ。ただ、在るだけのすばらしさ。
図面化すら不可能な建築が、実在することに勇気づけられながら
全国で民家の種をまく日々が続きます。
ゆあさ