大角設計室のブログ

おだやかなくらし。刻が染み込む家をみんなで創ります。

或る一日を切り取って

 

広島にいってきました。

新しいプロジェクトです。古い納屋をリノベーションする要望を受けました。

 

少し山に入ったところに建つ民家です。

 

山間に建つ民家は往々にして、斜めに敷地がなっているため

建物を建てるために平地を確保する必要があります。

 

昔の人はその為、石を自ずと積んで、平地を造成し、その上に家を建てました。

今回のケースも例にもれずです。

 

僕は、個人的に、この「石を積む」という

人為的行為のデザインがとても好きで、

全国各地の民家で石垣をわざわざ見に行っています。

 

 

 

古い家のプロジェクトの場合、もともとの建物を利用して

新しいデザインを考えていくので、まず最初にすることは「実測」です。

 

実測とは、煎じ詰めれば「建物を測り数値化すること」になります。

その数値化されたものが実測図という名の「図面」となります。

 

 

 

また、建物の傷み・傾き・不具合なども測って、記録にとどめておきます。

大角設計室の新人時代は、この実測作業と実測図面をおこすことに従事するわけですが、

その作業は先ほど言った「数値化」になります。

 

気を付けないといけないことは、

大角設計室としての仕事として期待されていることは

「数値化だけではない」という事です。

 

そのことに気づいたのは、実測中、

大角が何をするでもなく、現場をふらふら、ぶらぶら、ふんふん、

と、当てもなく散歩し、建物を観察している様子に気づいてからです。

 

 

 

再生する建物には、記録に残っていない日常や、

このブログの冒頭で述べたような石垣など、一見すると「数値化できないコト」が

建物のそこかしこに染み込んでいます。

 

そうしたことを実測者は自分なりに掬い上げるセンサーが必要ではないかと思います。

 

「数値化できないコト」=「価値のないコト」となりがちな現代ですが

設計事務所は「数値化できないコト」に「カタチを与える」ことが出来ます。

 

そこに共感が生まれれば、

自分の家に「価値があるのだろうか?」と自信がなかった住まい手にとって

一条の光になれるのではないかと思っています。

 

 

 

ゆあさ