大角設計室のブログ

おだやかなくらし。刻が染み込む家をみんなで創ります。

リレーの中間走者

暑い日が続きますね。

大角設計室では、以前長屋門を再生した

「信岡フラットミュージアム」の別棟の再生をしています。

 

元々茅葺だった茶室と、物置小屋を同時に直す計画です。

 

お茶室は以前に尾道まで茅葺の茶室を見学に行き、

やはり頑張って茅葺に戻そうということになり、

そのお手伝いをしています。

 

見学の話は下記のブログに書いています。

o-sumi.hatenablog.com

 

こちらが主屋の玄関です。

梅の花がきれい(今更ですが)

 

この景色から左にグーっと目を向けると

銅板葺のお茶室があります。

小さなお茶室ですが、庭から屋根が良く見えます。

古い庄屋だったこの家はたくさんの棟で構成されているので

その中で一つ、この屋根が茅葺になると、

建物全体がギュッと締まってとてもいい構えになりそうです。

 

囲いを設けていざ工事開始です。

 

この建物は文化財に登録されているので、

どのように直していくか、

資料を集めながら、検討していきます。

 

銅板を取ると、もともとの茅が露わになりました。

 

茅葺屋根は棟のつくりや、茅の種類、厚みや勾配や軒先など

たくさんの種類があります。

 

棟の形だけでも置き千木、針目覆い、芝棟、簀巻き、瓦巻、みんのす…などなど

 

いろんな種類があり、地域性や昔の写真などから

どのような形状だったのかを、根拠と共に決定しないといけません。

 

そこでとても重要になるのが痕跡です。

 

茅葺屋根は昔は全国各地にありましたが、

時代の途中で瓦葺になったり、燃えてしまったり

元々の形状が全然分からないものも多いです。

 

しかし、今回は銅板の中にまだ昔の茅が残っていて、

たとえ傷みが進んでいても、ここから多くのことが分かります。

 

逆説的に昔のものを全くなくしてしまうと、それをもとに戻すのは至難の業です。

なんでも壊してしまうのではなく、できるだけ未来へ繋がるように。

あくまでリレーの中間走者である意識が大事なんだと思います。

さて、とは言っても方針が固まってからが本番です。

あくまで助走。それをどうやって実現するかを詰めていきます。

 

いい茶室になる予感

 

物置小屋についてはまたの機会に。

未来の自分に託します!(笑)

 

うえにし