茶室の工事が着々と進んでいます。
今回は茶室の屋根について書こうかなと思います。
材料は茅、柿、瓦、など多岐にわたります。
ちなみに柿(かき)と柿(こけら)は違う漢字ということをご存知でしょうか。
私は恥ずかしながら最近知ったのですが
フォントによっては全く同じに見えますが
「かき」は木へんにつくりは亠+巾で
「こけら」の方は木へんにつくりの縦棒は繋げて書くそうです。
そもそも柿とはなんぞやという方も多いと思いますが
木の板を細かく割ってそれを重ねていき
屋根にするという柔らかい曲線が得意な寺社や仏閣に多い葺き方です。
今回茶室の手本とした4帖半の又隠は茅葺き、
2帖の待庵は柿葺きです。
どちらもとても綺麗な屋根なんですが
使いやすさやメンテナンス性を考えると現代の茶室では銅板葺きがポピュラーです。
銅板は薄いので柿葺きのように綺麗に曲線が出ます。
この「曲線」というキーワードが茶室の屋根においては重用な要素で
屋根は「むくり」という丸みを帯びた形にしたり
隅部分は緩やかにつながった形にしたり
丸い竹を垂木にしたり
柔らかく嫋やかになるように調整していきます。
軒先きはどれぐらい垂れを伸ばそうかな、とか
谷はどうやって納めようかな、とか
板金の割り付けは、など
大工さんや板金屋さんといろいろ相談して1つ1つ決定していきます。
屋根の隅の部分は「ハマグリ」と言って扇状の銅板を1枚1枚屋根に合わせて加工していきます。
折り曲げた部分が追従するように叩いて伸ばして曲げています。
これ、切ってしまえば簡単なのですが水じまいが悪くなってしまうので
大変でも叩いて伸ばします。
軒裏部分も少し特殊で
竹を縦横で組んでその上に板を貼っていきます。
写真で見ると材料は曲がってたり紐(本当は藤の蔓)で結んでいたり
とってもラフに見えるのですが
軒先の木はピシッとまっすぐ通っています。
この辺りがさすが!という感じですね。
些細な寸法の決定を積み重ねていく作業は
本来の設計の基本ではありますが、
仕事を重ねるうちに様々な部分で自分なりの「最適解」が生まれ、
それを使いまわすこともあると思います。
それは使い続けるうちにどんどん洗練されていくので
そこに作家性が生まれたりもします。
でもそれは無意識下での決定が増えるということで
デザインを行う時に注意しなくてはいけません。
一つ一つが全然違う家を作るので
思ってもない不都合が起こる場合もあります。
茶室は小さな建物だからこそ積み重ねた「最適解」を一つづつ疑って
全然違う解を生む絶好の機会になっています。
それはおそらく大角もそうで、
年を重ねても今までの解法を疑える仕事があって
本当に幸運だなと思います。
まだまだ成長中。です!
うえにし