大角設計室のブログ

おだやかなくらし。刻が染み込む家をみんなで創ります。

蜻蛉の鬼瓦

 

群馬にいってきました。

 

岡山の始発に乗り込んで、真っ暗な空を抜けてくると

目的地に到着する頃には真っ青な時間になっていました。

 

はじめての群馬での冬です。

 

今までは気づかなかったのですが、川の向こうに真っ白にそびえる雪山が見えます。

なんていう山なんだろう?って住まい手に質問すると

あれは「浅間」ですよ。と教えてもらいました。

 

群馬と長野の県境にそびえる標高2550mの山。

群馬に来ることになって、上毛三山「赤城」「榛名」「妙義」は覚えていたのですが、

まだまだ知られざる景色がありすぎて、群馬県は地理的にもいろんな意味でも

奥深すぎです。

 

 

 

すこしプロジェクトがとまっていましたが、ふたたび始動することになり

打合せに行ってきました。

 

木造建築は一般的にはあまり意識されませんが、

「木の乾燥具合」を意識することがとても大切です。

 

木は水を吸って成長しますから、山で伐採した直後水分を含んでいます。

そのまま建築木材として使ってしまうと、

時間と共に水分が減ることで、木が変形したり、縮みや割れなどが発生し

建築強度や美観などに問題が発生してしまします。

 

だからと言って、ガンガン強制的に乾燥させれば良いかと言えば

そうでもないのが木の難しいところ。

 

お風呂あがりの髪の毛をイメージしてもらうと分かりやすいのですが

上手にドライヤーをあててくれる美容師は髪を乾かしつつも

髪の表面を傷めずに、なおかつ、艶を引きだしながら

しっとりしなやかな質感で仕上げてくれます。

 

木も同様で、ガンガン容赦なく乾燥させることも可能ですが

それは「木本来の粘り強さ」「しなやかさ」「艶のある美しさ」「香り」「肌ざわり」

などなどを失う諸刃の剣にもなり得ます。

 

そのへんの事に今回はこだわって、木を山から伐採する時期、伐採する山、乾燥方法

それらを丁寧にしてもらっています。

 

 

丁寧といえば、群馬県は高崎にある「マルキ」さんに施工いただきます。

その工事風景も見さしていただきました。

 

戦後空襲を受けた高崎市

その後比較的早く建てられたレトロ感と文化が薫る小住宅でした。

今回はその建物を改修されている最中でした。

 

「今回は何もしないことにしました」とは社長の談。

 

みなさんお判りになるでしょうか?

 

 

よく古い家をつかった古民家カフェや、雑貨屋さん、ゲストハウスなどがありますが

ここでいう「何もしない」は世の中にあふれた「何もしない、とは、別物」です。

 

「何もしてない」と思われるほどに「不要なことは加えない」けれども

「必要なことは徹底的に手を加える」ということを言わんとしているのだなと

現場を見て思いました。

 

 

「何もしない」=「何もしなくていい」とは違うというコト。

これの判断の線引きが出来るかどうかが、巷にあふれる

「セルフビルド」や「DIY」と【プロの仕事】の(気づかないけど)大きな違い。

なんだナァとしみじみ。

 

 

 

 

この家には高崎城につかわれていた鬼瓦が転用されていて

何だかよく似合ってます。

 

古くて良い物って、儚くて、なくたって困らないように一見思われるけど

名もなき誰かが引き継いで、守って、ようやく私達に届くんですよね。

 

「技術」だって同じです。

 

分かりづらい見えないバトンを、職人さんや設計者は、古い建物から読み取って

次の時代へ渡せるように背負っていく。

その繰り返しなんだろうなぁと思います。

 


とは言え、そんなカッコつけたことは良いから

さっさと、さっさと、家を建てませんかねぇ~(家族の書初め)と

住まい手の家族からの想いのバトンもしっかり受け取らして頂きました。

 

 


そういえば、あの鬼瓦に彫られた家紋は「蜻蛉」。

「前へ前へ進め」という決して後ろを振り向かないで飛び続けるトンボのごとく

頑張りましょうねと、私に語り掛けていたんだろうなぁと。

 

楽しんでがんばります!

 

 

 

ゆあさ