大角設計室のブログ

おだやかなくらし。刻が染み込む家をみんなで創ります。

わいわいがやがや

急にめっきりさむくなりました。

服をもこもこにして今日も現場に向かいます。

 

今回は「信岡フラットミュージアム」の別棟の再生工事の続報です。

前回のブログから結構時間が空いてしまいましたが

実は着々と工事は進んでいます!

前回はこちら↓↓

o-sumi.hatenablog.com

 

今回は茶室について書いていきます。

茶室の茅葺工事がいよいよ始まりました!

これは覆っていた銅板を外した様子です。

この崩れた屋根からもたくさんのことが分かります。

 

例えば、茅と一口に言っても葦、ススキ、藁、稲、いろんな植物の総称なので、

実際に何を使って葺いていたのか。

 

そして、棟の飾りも残っている材料から類推することもできます。

 

そして茅を一度すべて取って、整理整頓します。

使える茅、捨てる茅、新しくする茅

 

茅葺は実は痛むのは表面だけで中の方は結構使えたりするんです。

この建物も銅板に覆われていたとはいえ(おそらく)100年ほど前の茅ですが

まだ多少は結びなおして使うことができました。

 

そして新しく入れる茅は阿蘇の方から持ってきたススキを使いました。

いや~結構な量です。

床面積としては15㎡程度なんですけど、茅はやっぱりボリュームがありますね。

 

余談ですが、茅葺は日本全国どころか、世界各地にあります。

アジアに多い形式ですが、ヨーロッパとかにもあるんです。

 

そんな中でも日本の茅葺はちょっと特殊。

 

”真葺き”といって、茅の根元を下に向けて葺いていきます。

他のアジア諸国では”逆葺き”といって茅の穂の方を下に向けるんです。

 

それでどんな違いがあるかというと、

真葺きは、雨仕舞が悪いけど長持ちする、

逆葺は、雨仕舞が良いけどすぐ痛む、

んです。

 

頑張って説明しますと

茅は極端に言うと円錐状になっています。(穂の方が細くて根元の方が太い)

またまた~と思われるかもしれませんが束ねると結構顕著に表れます。

そんな束を穂を下に、根元を上に積んでいくとどうなるか想像してみてください。

どんどん屋根勾配が急になっていきます。

これは雨仕舞的にはとても合理的です。

でも問題としては穂の方があまざらしになるので、すぐダメになります。(穂の方が腐りやすい)

これが逆葺きです。

では逆に穂を上に、根元を下にするとどうでしょう。

どんどん屋根勾配が緩やかになってとっても非合理です。

でも雨が掛る根元は丈夫なので葺き替えサイクルが長くなります。

これが真葺きです。

 

日本の茅葺屋根はほとんど全域で真葺きを採用し、雨仕舞の悪さをカバーするために

勾配を急に、分厚く、進化しています。

 

そして皆さんが良く思い浮かべる”うずたかい”茅葺のかたちになりました。

短期的には非合理、長期的にいは合理的。

そんな選択。わかっていてもなかなかできないですよね。

 

そんな日本の伝統文化に触れてもらおうと

近所の小学生たちを呼んで、茅葺体験をしてもらいました!

わいわいがやがや

テレビカメラも来ちゃったりして

小学生たち寒さに負けずに元気いっぱいです。

半ズボンなんかもいて、シンジランナイッ

 

内容についてはまた次回お伝えします!

 

うえにし

大角設計室の家で暮らす日々

 

先日、Webメディアの編集者からお声がけいただき

取材の現場に立ち会ってきました。

 

今回の取材はいつもとは少し様子が異なっており

「写真」ではなく「動画」での取材となっています。

 

巷では「ルームツアー」なるYou Tube動画がはやっていて

いろいろなプロアマ含め建物内部の様子を気楽に楽しめるメディアです。

私達にお声がけいただいたのは、

以前お世話になった東京の建築雑誌出版社出身の編集者の方です。

私達の住宅も、出版社在籍時代にお世話になりました。

 

そんなご縁があって、今回の取材とあいなりました。

 

 

完成は年が明けてからですが、とても楽しみです。

 

また完成したらお知らせいたします。

 

 

 

ゆあさ

 

 

 

 

展覧会予告

急に例年通りの気温になってきましたね。

弊事務所のモミジは急な環境変化に乗り遅れて紅葉する前に葉を散らしかけています。

人も草木も季節の変わり目は体調を崩しやすいみていです。

 

さて、実は展覧会の準備をしています。

知る人ぞ知る岡山の建築家。

「矢吹昭良」の展覧会を行います。

大角もこの方から多大な影響を受け、イズムを引き継いでいたりします。

 

さて、どんな人だろうと気になったそこのあなた。

お手持ちのブラウザで調べてみてください。

なんとさっぱりロクな情報がありません。

 

この情報社会においてこんな人物はなかなかいません。

ですがこの人のデザインは超一流。

昨今の日本全体の古民家ブームの震源地にして

岡山建築界への影響は計り知れません。

 

少し気になってきましたか。

ならばネットに情報がない以上展覧会に来るしかありませんねっ!!

ただいま絶賛打合せ中ですが、

充実の展示になりそうです。

 

日程は来年2024年の3月12日から3月17日まで

天神山文化プラザで行います。

 

また何か進展があればご報告いたします!

 

うえにし

打合せイロイロ

 

大角事務所在籍スタッフの中では比較的多めに僕は県外の仕事を担当しています。

 

月の半分もしくは少ないときでも1/3は県外にいるくらいなんじゃないかなと、

ここ10年そんな生活を送っています。

コテコテの岡山弁全開で県外に打ち合わせに臨みます。

 

 

県外での打ち合わせでは、様々な風土や文化や人々の歴史によって紡がれた

興味深い出会いが数多くあり、設計者として確かに有益な血となり肉となる経験です。

 

 

打合せの窓からのぞく、各地独特のフォルムをした民家の風景が

この地に根を張っている建築を私達が創ることが出来る喜びと責任を感じさせます。

 

 

時には変則的に、県外から私達のホームグランドである岡山県

わざわざお越しいただくこともあります。

 

そういった場合は事前に打ち合わせ用の図面と模型を送り

貴重な時間を無駄にしないように配慮します。

(時間が無さ過ぎて、ぶっつけ本番になるときもありますが・・・)

 

さて打ち合わせにいってきます。

 

 

 

ゆあさ

保育園という器を考える

 

保育園を現在設計しています。

 

保育園という「施設」ではなく

子供のタメの「家」と読み替えて

大角設計室がいままで培ってきた、あたりまえに寛げる

たのしい建物になればなと考えています。

 

本来私達は「こどものため」の施設を設計することを依頼されていますが

気を付けないと、知らず知らずのうちに「管理しやすい=管理者の為」の建物を

設計しがちです。

 

もちろん「こどものため」にも「かんりしゃのため」にもどちらの為でも

あるのが本分ですが、なかなか塩梅が難しいんですよね。

いつも反省を繰り返している気がします。

 

 

(建築家:三澤文子さんによるレク風景)

 

 

そんななか、先輩建築家が設計した保育園の事例を見学に行ってきました。

同時にその場所で、設計者からレクチャーを受け

「工事」「法律」「断熱」「音環境」「防火」「耐震」「材料」などなど

多岐にわたる金言のティップス満載でした。

 

 

 

建築は「空間」といわれる目に見えない空気を詰め込んだおおきな箱です。

その「空間=何もないガランドウのところ」を人間が自由に動きます。

その「空間」という部分には

「光」「音」「熱」「力」「気持ち」などが普段は気にしないですが存在しています。

 

建築家は、時にそれを数値化(データ計量)して自分の実感と照らし合わせて

心地よさを獲得していきます。

 

 

 

たとえば、子供が使いや手洗い台の高さは何センチか?

といった具合に数字化したものの総体が、設計者の描く図面なのですね。

 

それをつかっている園児たちの表情を見て

本当に使いやすいかどうか、不具合が発生しないかなどを実感のうえで

答え合わせを繰り返していきます。

 

 

個人的にこの勉強会でよかったナァと思ったことは

園長先生の「子供たちはナゼ狭いスペースが好きなのか?」

という秘密を教えてくれたことです。

 

 

これからもすこしずつ、子供へのまなざしを深めていければいいなとおもいます。

 

 

 

ゆあさ

 

 

 

 

田舎の風景を守るのは

秋ですね。

 

そこかしこで稲刈りがはじまり、黄金にたゆたう稲穂の波間向こうに

名もなき民家たちが里山を背に静かにたたずんでいます。

 

田んぼに水が映える春から収穫を迎える秋までは、日本全国で

問答無用の美しさを感じることが出来ます。

 

地方の設計事務所である大角設計室は

日常的にこの原風景を体感し、デザインの血肉となっています。

 

 

まわりを見渡せば、時代に追われ、無用の長物となった廃墟寸前の建物が

そこらじゅうに点在していますが、それは建物の「ひとつの側面が終了した」

だけであってそれ自体の価値が「ゼロ」になっているわけではないケースがあると

大角設計室は考えています。

 

ナゼ

そう考えられるかというと、いくつもの古い建物を残し、再生してきた経験値があるからです。

 

民家は、確かに「生きて」います。

 

 

古い建物をよくよくよーっく見ると

ようやく、はじめてわかる未来のデザインの種が潜んでいることに気付きます。

 

現代的にいうと「Re design リ・デザイン(再デザイン)」ですね。

 

過去から学び、現代に花開かせ、未来につなげる。

そういった行為が地方で民家を学んで設計している私達の気付きです。

 

現在も関東地方に見られる民家形式をヒントに

現代的な視点を加えてプロジェクトが進行中です。

 

 

 

古民家だけではなくて、一般的によく見られる

サイディングやクロスが貼られた家も

経年による美しさの種を見つけながら、ふたたび住まいに命を込めていきます。

 

 

取り残された民家を残したいと強く願っておられる住まい手の方の熱意に励まされ

日本全国北に行ったり、南に行ったり、東へ西へと向かいます。

 

 

いろんな場所にいくとよくわかるのですが、

「民家」にはひとつの共通の質をともなった「美しさ」が存在します。

 

それは単純に、瓦屋根やシックイ壁、

木材の風合いや各地方の特徴ある形や形式とも違います。

 

その共通の美しさとは名もなき民家たちの「根っこ」のようなもので

その「見えないものを見えるかどうか」がとても大事です。

 

そうでないと単純に「時代遅れに感じる」家を屁理屈をこねて

再生産し続けることになってしまします。

 

 

 

でも「見えないものを見る」ってなんのこっちゃですよね。

 

ヨクワカラナイってのが本音だと思います。

 

だけど田舎に生まれて、田舎で暮らしていると、そんな「透明な存在」に

確かに包まれて暮らしている実感があるんですよね。

 

「見えないものを見る」ということが「この先100年続く家を創る」ことと

同義だとすれば、まず先人から知るべきことは

「100年前に遡って」考えることではないかと思います。

 

100年前に建てられた、日本に残されたそこかしこの民家は確かに100年の歳月を

耐え抜いてきました。

だからその始まりにきっとこれから「更に100年先」を見据えるヒントの種があるのではないでしょうか。

 

途方もない冒険ですよね。

でも楽しいです。

これだから「民家」はやめられないです。

 

 

ゆあさ

中秋の名月に

少し前、引き渡しをした茶室のある住宅で

中秋の名月にお茶をごちそうになりました。

 

監理していたときは毎日のように訪れていましたが、

久しぶりに伺った家は前と変わらず迎えてくれました。

 

住宅は、いったん手から離れてしまうと

毎日通っていたのがウソのように設計者も”お客さん”になってしまいます。

それはお施主さんの方に良く”なじんでいる”ということで、

とても良いことなのですが、

少し寂しかったりもするんです。

 

でもこの家に関しては非常に手離れが悪かったので

いまだに気軽に迎えてくれる気がします(笑)

夜にお邪魔したのは照明器具の点検以来

明かりが漏れ出てよい風景になっています。

 

 

この家には月を見るための茶室がありまして

その名も”待月楼”!

 

山の間から月が出ずるのを待ち、どんどん天に昇っていくのを眺める

小高い位置にある異質の茶室です。

まさに中秋の名月を想定して方角や位置を計画していました。

山の木々の隙間から岡山の夜景と月が望めます。

計算通りなのですが、実際に体感してみると計算以上に良かったです。

 

大角も身を乗り出してご満悦でございます。

お抹茶もいただいてしまい、

大変すばらしいお茶会をありがとうございました。

 

月がまぶしい!

うえにし