大角設計室のブログ

おだやかなくらし。刻が染み込む家をみんなで創ります。

生きたまま

このブログ前回のおさらい→はしらの種類




現場はさながら外科手術のような様相です。


新築と違い、再生工事の何が難しいのかといえば
既に民家がそこにあり、
その為にさまざまな工事のやり繰りが求められます。

心臓外科手術に喩えるなら
心肺停止しておこなう類いの物ではなくて
心臓をうごかしたまま、オン・ビートで手術を行うようなものです。








既に大工さんの前には生命力溢れある民家があります。
民家は重力の理にあらがえず、今にも崩れそうな状態です。
その形を崩さずに、持ち上げながら新しく補強を施し
正常な状態まで工事を進めなければなりません。

そうして手術をうける患者がすべて健康優良児とは限りません。
動脈硬化骨粗鬆症気味かもしれません。

再生される民家も、アリクイ・虫食・腐れ
何でもござれのオンパレード。









そんなに危ないなら
新築ないしは解体してからもう一度組上げれば良いじゃない。

そんな声が聞こえてきそうですが
何件か再生工事に携わってきて感じることがあります。
やはり、家は倒す事無く
建っている状態のまま、工事を施す方が
工事完了の瞬間から、なんというか「魅力の深み」が違います。


家は文字通り「生きて」きたんだなぁと命を感じます。


再生工事のキモはこの「生命感」つまりは
醸造された時間」の魅力を如何に失う事無く
次世代に繋いでいくかという事ではないでしょうか。
それは、人間だけでは作り出す事の出来ない本当の美しさを湛えたものです。


そういう観点からみれば、建てたままなおす、という事は
理にかなっているとも言えるかも知れません。







さて
なんとか心臓部は成功しそうです。
一安心・・・
かと思いきや、次々に再生すべき箇所に黙々と取り組むのでした。



トリプルルッツダブルループ・ダブルトゥループ
では無く
トリプルアクセル×3


E難度ですね。


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ゆあさ