大角設計室のブログ

おだやかなくらし。刻が染み込む家をみんなで創ります。

建築の無駄

工事打合せの為に京都に行ってきました。
無事に打合せも終わり、僅かな時間を縫って
以前より行きたかったお寺へ行ってきました。


紅葉時には素晴らしくこの建築は
自然の霊気と一体になれるであろうと思います。
そんな工夫(デザイン)が見てとれます。


この寺は、日本初の漫画とされる「鳥獣戯画図」(正式には鳥獣人物戯画)で有名です。
現在は管理保存が困難なため、寺で所蔵しているのではなく
国立美術館にて委託保管されています。

なかなか流石と思う筆遣いでした。
漫画が国宝ってスゴいですよね。
でも何がすごいって、見てみると本当に笑えるんです。
未だに面白い。このCG全盛時代にですよ。
昔から関西人はオモロかったんでしょうね。


もう一つこの寺の有名な側面は境内にある
「石水院」とよばれる国宝のちいさなお堂です。
建築関係のかたには広く知られた名建築です。

この建築のたおやかで清らかなデザインは
日本人の大切にしてきた建築概念を
静かに、きわめてひそやかに体現しています。

その概念とは「透ける」という言葉です。




その素晴らしい空間を成立させる秘密は建築の縁側の構成です。
また、構成もさることながらこの建築家の意志が
もっとも現れていると感じたのが
この面取りに象徴される箇所です。
みさなまも機会あれば是非、その美の秘密をさがしに行かれることを
お勧め致します。



帰り際。振り返ると、先ほどの石水院がなんとおおきな
杮葺きの屋根によりかたちつくられていたのかと驚きます。
小規模な建築には不釣り合いな程屋根が大きすぎるのです。

現代的な考えで美しいとされるものとは、
シンプルで合理的なものです。
その観点から言えばこの屋根は無駄に見える程おおきい訳です。
が、しかし実際に見ると、美の成立要素としては必要不可欠なもののように
感じられます。


私達はどこかで、日本的シンプルの意味をはき違えたのかも知れません。


シンプル=無駄のない、

ではなく

シンプル=余白に美を感じれる、余裕のあるデザイン。


「余」が豊かさをうみだすのです。
「余」が必然的に偶然の美(自然の霊気)を室内にも満たすのです。

「ない」ように、「ある」のです。

そのデザインは、受けとり手とのキャッチボールにより完成します。
受けとる側の心にも、美しさを受けとめる余裕が必要なんですね。



施主に用意してもらった美しいお弁当。
一つ一つの食材にストーリーが感じられます。
松茸の霊気がぼくの脳天をいつまでも満たしていました。



ゆあさ