大角設計室のブログ

おだやかなくらし。刻が染み込む家をみんなで創ります。

木の家を建てれるのは誰か

前回までのおさらい
o-sumi.hatenablog.com


木の家を建てています。

日本全国の戸建て住宅の構造別割合は約九割程が木造です。
つまり日本の住宅は木で出来ている住宅がほとんどですが、
この「木で出来ている」というニュアンスがクセものです。

家の一部に木を貼って「木の家」と呼ばれているケースがほとんどで
大工さんがつくるから「匠の家」と謳われる家が世の中には溢れています。

現実は、工場で大工さんが関わることなく、
機械まかせに木が加工されたものが、現場に運び入れられます。
そして木ではない工場で生産された化学製品が家を覆い尽くしており
免罪符的にいくらか木を貼る。そんな家がほとんどでしょう。



それは社会のニーズから生まれたものなのだ。
そういわれるかもしれません。

大工さんの出来ることは機械にも出来る。
そういってプレカットの技術が生まれ工場で木材が加工出来るようになりました。
しかし、大角設計室の木造の図面をプレカットが出来るかと言うと
出来ません。なぜでしょうか。

それは、プレカットに可能な技術の範囲は限られているからです。
そしてその範囲は、機械で加工しやすいかどうかによって決定されます。

木の仕上げについてはどうでしょうか。
木の仕上げは施行する側に豊富な経験則と高度な技術を必要とします。
それらは作り手にとってリスクを伴い、お金を生み出すためには
煩わしい労力となります。


おそらく「名ばかり木の家」が増えたのは社会のニーズといいつつ
住宅産業、つまりは供給する側の手前勝手な都合が原因ではないでしょうか。
住まい手不在の、作り手主導が招いた日本の家の貧しさ。

もともとプレカットや住宅の仕上製品は
安定した供給量で豊かな家をつくりだすことが目的で
最初の開発者は考えていたと思いますが、これが現実です。



写真は静岡県で設計監理している加工場での写真です。
施主の方と一緒に大きな丸太や大工さんの仕事ぶりをご覧いただきました。
その反応を見ても、住まい手は本当の木の家を求めていると感じます。

「名ばかり木の家」で多くの住まい手が満足できるのは
本物を知る機会がなかっただけではないでしょうか。
今では皮肉にも、作り手側もついぞ本物をつくる機会を失っています。

住まい手の本当のニーズは、「本物の木の家」ではないでしょうか。
そして、それを紹介出来るのは現在では他ならぬ設計事務所の仕事です。


ゆあさ

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