大角設計室のブログ

おだやかなくらし。刻が染み込む家をみんなで創ります。

何かにつけ、墨に付け


新築工事の為に加工場に来ました。
家をつくる。といった時にイメージするのが
大工さんが木を削ってカンナをかけて、ノミをつかってザクザク。という感じでしょうが、

日本の建築現場の90%くらいは、もうそんな風景残ってないんじゃないでしょうか。


大角設計室ブログ読者はよく木材加工の現場写真を見ると思いますが
実は、絶滅危惧種に等しい現場風景なんですね。

国の調査によりますと、木材加工場(製材所)は全国規模でどんどん閉鎖されています。
閉鎖されるのはだいたいが小規模な加工場なわけでして、
それぞれの農村の里山の木がほったらかしの状況になった理由のひとつです。
一方そのながれとは反対に大規模な木材加工場は増加の傾向にあります。
このことにより、巨大な住宅産業に対応したシステムが日本全国に広がっています。

現在流通している住宅はほとんどが「木造」であり、
一戸建て住宅に関して言えば80%を超える割合で「木の家」が建てられています。

木材をつかった住宅の需要があるにもかかわらず、なぜ、小さな加工場は廃業に追いやられるのでしょう?
何故反対に大規模な工場は増えるのでしょうか?




甘い・・・






木造住宅建築においては、大工技能者が減少する中で、
施工期間の短縮や施工コストの低減等を図る観点から、
柱や梁等の部材を工場であらかじめ機械加工した
「プレカット」とよばれる工法が現在の住宅産業の主流です。
恐らく戸建住宅全体の90〜95%以上のシェアをしめると思います。


何故それほどまでに機械加工の住宅が主流かと言いますと
社会的ニーズに合っているからです。
近年、住宅の耐震性や製品の品質・性能に対する消費者ニーズが高くなっていて、
強度性能が明確で寸法安定性に優れた製品が求められています。
このような中、施工性に優れ、耐震性を高める「製品」としての木材需要が伸びています。
集成材も強度性能が明確で、寸法安定性に優れた「製品」として構造材での利用が増加しています。
反面、要求される工事期間は劇的に短くなることが要求されています。
その結果、大量供給が短時間で可能である大規模工場しか製材屋は生き残っていけません。

機械加工に適した木材というのは、機械加工しやすいような半工業製品の木でなくてはなりません。
クセがすくなく、強度も一定で、乾燥具合も一定。非常に優等生な材料ですね。



そんなわけで、「プレカット」が主流の今の時代建てられる一般的な住宅においては、
大工さんがノコギリつかったり、そんな作業必要ないんです。
木を削ったり、木を一本一本選んだり、刻んだり測ったりする必要がないんです。

ほとんどの建築現場はプラモデルのように形と寸法をコンピュータによって整えられた
部材を、パタパタと組上げていくと一丁上がりです。


では、残り数%のコンピュータが作らず、大工さんが作る家
いわゆる「手刻み」の家は、 なぜ存在するのでしょうか?






あまい、あまい、甘いぃ〜







それは何故か?
答えは単純です。
機械が万能ではないからです。
人間が培ってきた文化には、まだ追いつかないことが家づくりにおいては
まだ残っています。

例えば、丸太。
これは、機械ではどうしようもありません。
機械は木の自由闊達な形にあわせて加工するのが苦手です。
真っ直ぐな材オンリーです。




例えば、鉋(かんな)をかけること。
え?
っと思われるかもしれませんが、プレカットの製材は鉋に近いですが
カンナではなく「モルダー仕上げ」といった別物です。
もうちょっとプレカットで気合いが入っているとこは「超仕上げ」を行います。
上手な職人がかける鉋仕上げの材とは、肌触り、光沢が全く違います。
モルダーはモルダーで綺麗と言えばきれいです。超仕上げはほとんど鉋仕上げです。
が、鉋仕上げにまだまだ機械は追いついていません。(上手な職人に限りますけど)






いつか文化をコケにしたツケが来るような気がします。
そんなことがないよう、丸太に墨ツケしといた方がいいような・・・。


優良な工務店は、歯を食いしばって時代の逆風に堪えながら
材木に文化を刻んでいます。

そんな職人さんにやってみたいなぁ。でもめんどくさいな。
けど完成したら、おおいに誇らしげになれる家の図面を描けるように
今日も図面を描いています。




ゆあさ



*施主からいただいた玉蜀黍と桃、美味しかったです!