大角設計室のブログ

おだやかなくらし。刻が染み込む家をみんなで創ります。

雨が止んだ時

梅雨の切れ間に現場に行ってきました。
梅雨の現場は工事する大工さんには大変な季節です。

雨で外部周りの工事がなかなかはかどらず、
天気予報とスケジュール帳を睨めっコ。
無垢の木を扱う現場が多い大角設計室の現場は
湿気で木の伸縮がおおきくなるこの時期は特に職人の方は
木をつかって現場に望みます。



そんなピリピリムードですが、
僕はこの時期(だけでなく通年ですが)のんびり現場を遠くから眺めます。



大角設計室の作る建築は
この時期が、本当に美しく感じる瞬間が多く訪れます。


田んぼに水が入り、
雨によって大気の塵が洗い流された澄んだ空気に
しっとりした甍の民家群が浮かび上がる。


田舎でたった一軒の住宅が
見事にその地域を決定づける、過去から続く 新しい風景となる様は
なんとも幸せな仕事をしているのだなと
実感する瞬間です。




この民家でも周辺との新しい関係がテーマです。
「新しい」とはいっても本当は昔から在ったのだけど
見え辛かった「ありふれた美しさ」を室内に印象的に取り込みます。

印象的に外部を取り込む方法として
ピクチャーウィンドウなる手法があります。
写真や絵画の額縁のように外部の風景を窓枠等で切り取る方法です。
この方法を取れば、外部と内部の関係が非常に明快で
建築写真にとればとても文字通り絵になります。




ですが、あからさまに室内に外部を取り組むのではなく
住んでいて何年か経ったのち、ふと気づくような
そんなさりげなさで室内に取り入れるようにデザインしたいと
考えています。

そんな風景こそが、田舎の美しさの本質ではないか。

なんだか最近そんな気がしています。



室内に行儀よく並べられた、拵え物の数々の木材。
出番がくる梅雨明けの季節を静かに待っています。
暗がりの中でみると、大工さんがちゃんと拵えたものは
表面の艶が違いますからよくわかります。

棟梁、丁寧な仕事に感謝です。




もの言わぬ棟梁と
もの言わぬ設計者の無言の対話が
雨の切れ間に行われています。






ゆあさ