大角設計室のブログ

おだやかなくらし。刻が染み込む家をみんなで創ります。

受け継がれてきたもの


いつの日か、この写真が撮られた時の気持ちを
この子が思い出す日が来るまで、きっとこの家は建っています。

親が、子に、伝えてきた、見えない大切なものと
これから出来上がる家はどこかでシンクロしています。



家は、現在ではあまり意識されませんが
子々孫々、受け継がれてきた存在でした。


何故なら、家を建てるということは、
大変な労力の上に、財力、時間をかける必要があるため、
一人の一生で抱えきれるような代物ではなかったからです。



加工場で、丸太を持ち上げてもらったり、
薫りを楽しんで貰ったり、
木材に触れてもらったり、
彫り込まれた仕口の陰影をみたり、
大工さんと他愛のない会話を交わしたり。

加工場を見ていただいている
施主さんの顔を見ていると

「ああ、きてよかった。」


と、いつも思います。



家つくりは、エンターテイメント性が高く、この
つくっている最中にも、施主さんにとって、宝物になる時間が多くあります。




ですが、家づくりの本当の凄みというか
すばらしさみたいなものが、ちゃんと伝わるように、
しなければならないなと、いつも思います。


設計者が、家づくりに深みをもたせる意匠を施せない様では
あっというまに、情報化社会にすくいとられ
家づくりの、いままで培われてきた文化は干上がってしまいます。




大工の技が、棟梁から弟子へと、一本の木を介して
伝承されていく様に

一つの家を介して、設計者は何処までを
生産者や、施主や、設計者や、まだ見ぬ他者へと
与えられてきたものを伝えられるでしょうか。

棟上げが、近づいています。




ゆあさ



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