今年も担当している現場のいくつかで建物の棟が上がりました。
よく家を建てるイベントで「棟上げ(ムネアゲ)」という
言葉を聞くとおもいます。
家を建てる方にとっては大イベントです。
人生に例えるなら「出産」でしょうか。
昨今の一般的な住宅事情からすれば
あまり「生みの苦しみ」を感じさせることはないようになっています。
もうすでに出産後の建売住宅を買ったり、
工場で数時間でパーツが加工される過程を経て
ほとんどの家がうみだされています。
ひるがえって、大角設計室の建物はどうでしょうか。
先ほど一般的な住宅の「生みの苦しみ」について書きました。
確かに、建ち上がるまでの時間が早いに越したことはないですし
住宅を初めて建てられる方が、理解しやすい、サンプル帳からちゃちゃっと
簡易にセレクトできる仕組みもいいところがあります。
でも、本当にすべての住まい手が
そういった建て方を希望しているかどうかは怪しいなと思っています。
それが
設計を生業にしてきての偽らざる気持ちです。
何度も打ち合わせをしてドキドキしながら
段々おなかの中で胎動する我が子を感じながら
愛しい時間を過ごしている施主の表情をみていると
やはり、深く考えるには最低限の時間が必要です。
そして、深く希望を実現するためには図面の熟考も大切です。
そして子供が大きくなる為に注がれる時間。つまり
大工さんにも、丁寧な技術をそそぐ十月十日が必要です。
棟上げの日に施主の方に建ちあっていただいて
本当にドキドキした表情をされていました。
いわば「立ち合い出産」みたいなものですね。
初めて見るわが子。
それにまして、思っていたより大変な「難工事=難産」とはっきりわかる
大工の仕事の熱量を感じていただけたようで
映像として記録を撮っておられました。
そういった熱量や迫力を感じる住宅は少なくなって来ています。
この現場で初めて私たちの仕事にかかわっていただく設備業者は
「こんな仕事の家みたことない」とえらく感心しておられました。
そうなんです、家づくりは出産と同じで、
「生み手(施主、設計者、工務店)にとって、ものすごい熱量の先」にある
凄いイベントなんですよね。
それくらいの大変な仕事の労いとして
古来より、日本ではその祝いの風習として「棟上げ」が
あるんだろうなと思います。
かなうことなら、是非、立ち合い出産をおすすめいたします。
ゆあさ