大角設計室のブログ

おだやかなくらし。刻が染み込む家をみんなで創ります。

気づかい木づかい

建築をつくる場所は、現場が中心ではありますが
じつは、他にもさまざまな場所で工事に関する様々な事が行われています。

現場で組み上がっていく様子も、見応えがありますが
その下ごしらえの工夫を知ると、更に目の前の建物が愛しくなるかもしれません。

今日のお話は、現場ではなく
「加工場」で密やかに行われる大工さんのキヅカイについて。



小雨降る中、加工場に向かいます。
道中に川を渡るとき、鉄骨で出来た橋を渡ります。

この橋は、同じ形状の門型の骨組みを幾つも組み合わせ
それらを連続していくコトで構成されています。
特に、左右にあるナナメの材が上下にジグザグに反復し
車のスピードと相まって軽快な印象に映ります。

前置きが少し長くなりましたが
今回はこの橋の構造形式である「トラス」と呼ばれる
三角形を直線材でつくる工夫がテーマです。




加工場に到着。
加工場の天井は「トラス」とよばれる三角形を基本形にした
構造形式で構成されています。

日本はもともと和小屋とよばれる構造形式が採用されており、
一般的には「トラス構造」は、外国から取り入れられた技術です。

トラス構造の特徴は大きく二つあります。
1つは、柱を建てることなく、端から端までの
長い距離を一気に屋根を支えることが可能です。

2つめは、三角形を基本形状にして、
比較的に小さな材料で荷重に対応します。






そんな特徴からわかるように、比較的に大空間が必用な場所に
採用されてきた構造形式です。

例えば工場や、倉庫等ですね。
そんな大空間を支える構造材を効率よく加工するために
一般的には、同形状で同じ寸法のものを何個も何個も作ります。

その形式を作るために作ったであろう昔の型紙が倉庫の壁に
ぶら下がっていました。
いかに効率よくできるかが、工場や、倉庫といった実務的空間には
求められるわけですね。




効率よく加工するために
一般的には丸太等の曲がった材料ではなく、直線的な「角材」を使います。

今回の現場でも、角材を採用しています。

大角設計の構造を見慣れているかたは
丸太と違って、曲がってない直線材だから
加工は簡単なんだろうな〓。。
と、思われるかたがいらっしゃるかもしれません。


でも実は、丸太と同様に
直線的な角材に、大工さんは気遣いをしています。
写真を見て気づかれましたか?






もう1つヒントを。
この写真の中央に真っ直ぐひかれた墨が
先程の角材のための型紙の線です。

もうお分かりですよね?

そうなんです。角材を真っ直ぐではなく
わざと、中央にムクるように加工しなおしています。


そうすることで、この直線材に荷重がかかった時
重さで沈みこむ形状変化をあらかじめ想定しているんですね。




現在、無事に現場でくみ上げられた角材は
そんな秘密に気づかれることもなく、涼しい顔で屋根を支えていました。

現場で、さまざまな秘密のキヅカイを気づかないのは
実に勿体ないことでも有ります。が、同時に

あまりにも違和感がなく見れると言うことは、
さりげなくデザインされた、居心地のよい家であるのだなとも思うのです。


ゆあさ