大角設計室のブログ

おだやかなくらし。刻が染み込む家をみんなで創ります。

見た事ある空間のあたらしさ(蔵王の家最終回)


約半年ぶりの投稿となります。
いやー、懐かしい現場。

竣工していた現場の写真が出来上がったので、幾つかアップします。



とても敷地環境に恵まれていて
美しい背景を大胆に取り込みながらも、
厳しい寒さや、明け透けすぎる敷地のプライバシーの確保
また、クセのある敷地高低差の克服と活用。

思い出すだけで、
いやー、大変だったなと。
現場途中は、あんまりそのような事は思わないのですが
今にすると、そう思い出します。




この建物は、ひとつの新しい日本建築のカタチを
うみだせたのではないかと思っています。



「間(ま)」や「縁(えん)」などの
古くからある、日本建築の造形用語の

新しいカタチとして、この「あたらしい縁側」ともいえる
この空間が、
一見、無駄のようで、
深く深く、機能的にも美的にも、豊かに作用しています。



本当に新しいカタチとは
「全く見た事がない」というものでありながら
どこか、見た事のあるような
「そうそう、これだよ」と腑に落ちるような
前から使い込んだお気に入りの道具のように
身体的にも、精神的にもフィット出来るものでありたいと思っています。





ただ、現代の一般的価値観が求める「新規性」とは
「単なる物珍しさ」や「単なる見た事の無さ」です。

そうした「新しさ」は大衆に受け入れやすい反面、
簡単に消費され、廃棄されるサイクルから抜け出せません。





私達は、住宅の仕事が多いので
人間の豊かさに繋がる「新しい建築」を考えています。

一見すると、私達の建築は、古き良き伝統建築であって
現代建築に見えないのかもしれません。


でも、それは
「見た事ある空間のあたらしさ」を
私達が獲得しはじめている証拠なのかも知れません。




ゆあさ