うちの事務所がお願いする大工さんはカンナがけ一つとっても光る仕事をしてくれます。
右から順に木屑が綺麗になっているのがわかるでしょうか。
よく歯を研いだカンナをかけると木の表面コンマ何ミリを均一に削り取り、
その表面が均一になるほど削り屑が紙みたいになるんです。
でも逆にあえて表面を荒らすような表現も行います。
浮造(うづくり)加工という柔らかい夏目を削り、冬目を浮き立たせる技法です。
これをコンクリートの型枠に使うと版画みたいにコンクリートに木目が転写されるんです。
工法としては難しいのに出来上がった姿は燻んでいてどこか土着的です。
建築界隈ではよく土着的をヴァナキュラーとカッコつけて言ったりしますが
この建物では山陰の地松を構造に使い、石はそこらへんの島や山から拾ってきたりして、
わざわざ遠くから取り寄せず、近くのものをこねて作ろうとしています。
そんな建物の足元もやはり、それに耐えうる物語を付加しようとしています。
滅菌的で都会的なものよりも、そこら辺に転がってそうな”なんでもない物”の方に
たくさんの熱量を込めてしまいます。
そんな美意識を共有しているお客さんと出会ったことは事務所としても財産だと思います。
今回は内部にも打放し面を化粧で表します。
サッシ用の盗みを入れたりもしています。
木造とはまた違う不可逆の構造物に挑む緊張感はとんでもなかったですが、
無事に打ち上がって胸をなでおろしているのが本音です。
とんでもなく大きな現場ですが、いよいよ来週から建て方始まります。
”なんでもない物”を積み重ねてた先に”とんでもないもの”ができそうです。
うえにし