兵庫県で開催されておりました、鶴林寺アートプログラムも本日をもって終了です。
ご参加いただいた関係者の方々、
またご来場いただいた大勢の方々ありがとうございました。
大角設計室も参加アーティストとして参加しておりました。
展覧会主催者側から
「0円ハウス」というテーマを与えられて
各参加アーティストがそれぞれに表現するという展覧会でした。
さて、では作者本人による、展示作品の解説をしてみたいと思います。
冒頭の写真は大角設計室が今回展示した作品で
タイトルは「ジュウク」です。
2つの約1.5立方メートルの木でできたボックスを配置しています。
3つの工夫について説明します。
1つ目は「材料」です。
「0円ハウス」というと「タダでできる家」と
一般の方はイメージされると思います。(本当のそれは本質とは違うのですが)
そういったイメージを裏切らないように
建築現場で、あまる端材(ゴミ)や壁の中に下地としてつかうボロボロの
下地材を材料として選んでいます。
2つ目は「仮設性」です。
岡山から軽トラで1時間ちょっとかけて、兵庫県の会場へ運び
2つの箱を1時間ちょっとで組み立てないといけません。
軽トラの荷台に乗せることが可能な材料の体積、サイズ。
大工工事素人が組み上げても問題ないシステム、デザイン。
台風や雨など、自然災害をやり過ごせる最低限の安全性の確保。
ただし、最低限の手数のデザインとしています。
具体的には、屋根、壁、床がそれぞれバラバラのパーツになるようになっており
簡単に組み上げられるように、差し込み穴や仮組材をつくっています。
3つ目は「メッセージ」です。
ここでは、設計を生業にしているものらしく、
そのもの本体の面白さももちろん大切にしていますが、周辺の環境をいかに取り込み
活かしながら、2つの箱を配置できるかをデザインしています。
行者堂(画像正面建物)という重要文化財の建物の三角屋根のラインを結ぶように
参道の両端に間隔をあけ二つの箱を配置します。
参道に神籬(ひもろぎ)と筵(むしろ)を配置することで
行者堂と二つの箱を結びつける見えない空間をハッキリ感じ取れるようになります。
不思議ですよね。
日本人はこの「見えない繋がり」を察知することが得意です。
この写真は、展示会場から車で10分ほどの神社。
巨石が水面からびみょぉーに浮いているんですよね。
タダならぬ、空間領域を感じます。
さてさてそんなことを踏まえながら展示解説に戻りましょう。
二つの箱の中には日めくりカレンダーが
壁の板の隙間を埋めるように貼ってあります。
箱の内部空間は周辺の景色や、風、光をとりこみながら
なんとなく穏やかで、包まれる空間です。
日めくりカレンダーの数字はじつは全て「素数」です。
タイトルである「ジュウク・19」も素数。(ちなみに2022年1月19日は仏滅)
covid19(新型コロナウィルス)にちなみ、おうち時間が
「住苦」「重苦」となってしまっている現実を
「素数という割り切れない日常として」表現しています。
しかし絶望することはありません。
知恵をもって、最低限のものでもデザインすれば
自分の居場所を確保することは可能です。
大切なのはそうして自分の生活領域(住区)を物理的にも
心理的にも広げて、解放していくことです。
見えないけれどつながっているものがあることを
建築はみなさんに伝えることが出来ます。
「0円ハウス」の本質とは、そうした
「自由な意識の拡張」こそが主題となっているのだと思います。
ゆあさ