古い家をなおす仕事が始まっています。
新築工事と大きく違うことは
工事前なのに既に、多くの要素が存在していることです。
要素とは、既存構造体、家族の生活、思い出の品、
庭との関係、近所との関係などなどです。
多くの人は、出来ることなら自分の今まで育った、
この生活が染みた家で
引き続き、永くにわたって住み続けていきたいと思っています。
ですが、永く住んだ我が家は、だんだん傷みが目立ち始め
流行の家とはだいぶん違ったくすぶった印象となり
後世(子供たち・孫たち)に残すのには忍びないような
でも壊すのはなんだか寂しいような、揺れ動くわが心。
そもそも、このくすぶった家が、
「本当によくなるのだろうか?」
「お金をかける価値があるのだろうか?」
「頼むとしたら誰に頼めばいいのだろうか?」
「一体ぜんたい、なおすといくらかかるの?」
そんなことを考えて、考えて、考えて、
今回は大角設計室にお話をいただきました。
古い建物の改修はやはり経験が、大きくものを言うと思います。
何故なら、そこには新築工事では絶対におきないような
「突発的な問題」が満載の工事現場になるからです。
工事の問題が発生する都度、臨機応変にプランに微調整を加える必要があります。
写真をぱっと見ただけでは分かりづらいかもしれませんが、
床の段差、梁の低さ、柱芯の二重三重のズレ、建物配置角度の変化など
様々な今後の問題要素が見え隠れします。
これは古い家は大抵、住んでいる途中で
ちょくちょく小さな増改築工事が行われており
その場しのぎで行った工事のツギハギが原因の事が多いです。
工事が始まり、壁や床、天井がはがされると
隠れていた構造体が見えます。
今回の工事のメイン箇所はもともと台所や浴室などの
水廻りが存在したところで、傷みが激しいものでした。
天井もヤッカイです。
雨漏りの跡。
柱、梁の傷み。腐れ。
構造的不安要素。
既存瓦が使えるかどうかの判断などなど
空間を見上げながら設計者は
これから起りうる問題を事前に予測し
なおかつ少しでも美しくなるように思いを巡らします。
改修工事のなかで、
既存建物を解体し、工事を進めていくわけで
多くのゴミやいらないものが出てきます。
今回は古い鏡台は残して
新しい生活にも引き継がれることになりました。
「この鏡台は、むかしからおふくろが使っていたから
残してあげたいんだ。」
そんな言葉を聞くと
古い家をなおす行為は「理屈じゃない」のかもしれないなと思います。
そんな「理屈じゃない」気持ちを後押しするために
工事者や設計者は、多くの技術や経験が必要なのだろうと思います。
ゆあさ