大角設計室のブログ

おだやかなくらし。刻が染み込む家をみんなで創ります。

理屈じゃないのかもしれない

f:id:o-sumi:20220219103102j:plain

 

古い家をなおす仕事が始まっています。

 

新築工事と大きく違うことは

工事前なのに既に、多くの要素が存在していることです。

要素とは、既存構造体、家族の生活、思い出の品、

庭との関係、近所との関係などなどです。

 

 

f:id:o-sumi:20220219103512j:plain

 

多くの人は、出来ることなら自分の今まで育った、

この生活が染みた家で

引き続き、永くにわたって住み続けていきたいと思っています。

 

 

 

ですが、永く住んだ我が家は、だんだん傷みが目立ち始め

流行の家とはだいぶん違ったくすぶった印象となり

後世(子供たち・孫たち)に残すのには忍びないような

でも壊すのはなんだか寂しいような、揺れ動くわが心。

 

 

 

そもそも、このくすぶった家が、

 

「本当によくなるのだろうか?」

「お金をかける価値があるのだろうか?」

「頼むとしたら誰に頼めばいいのだろうか?」

「一体ぜんたい、なおすといくらかかるの?」

 

そんなことを考えて、考えて、考えて、

今回は大角設計室にお話をいただきました。

 

f:id:o-sumi:20220219104508j:plain

 

古い建物の改修はやはり経験が、大きくものを言うと思います。

何故なら、そこには新築工事では絶対におきないような

「突発的な問題」が満載の工事現場になるからです。

工事の問題が発生する都度、臨機応変にプランに微調整を加える必要があります。

 

 

写真をぱっと見ただけでは分かりづらいかもしれませんが、

床の段差、梁の低さ、柱芯の二重三重のズレ、建物配置角度の変化など

様々な今後の問題要素が見え隠れします。

これは古い家は大抵、住んでいる途中で

ちょくちょく小さな増改築工事が行われており

その場しのぎで行った工事のツギハギが原因の事が多いです。

 

 

工事が始まり、壁や床、天井がはがされると

隠れていた構造体が見えます。

 

今回の工事のメイン箇所はもともと台所や浴室などの

水廻りが存在したところで、傷みが激しいものでした。

 

 

f:id:o-sumi:20220219110928j:plain

 

天井もヤッカイです。

雨漏りの跡。

柱、梁の傷み。腐れ。

構造的不安要素。

既存瓦が使えるかどうかの判断などなど

空間を見上げながら設計者は

これから起りうる問題を事前に予測し

なおかつ少しでも美しくなるように思いを巡らします。

 

 

f:id:o-sumi:20220221115416j:plain


改修工事のなかで、

既存建物を解体し、工事を進めていくわけで

多くのゴミやいらないものが出てきます。

 

今回は古い鏡台は残して

新しい生活にも引き継がれることになりました。

 

 

「この鏡台は、むかしからおふくろが使っていたから

残してあげたいんだ。」

 

 

 

そんな言葉を聞くと

古い家をなおす行為は「理屈じゃない」のかもしれないなと思います。

 

 

そんな「理屈じゃない」気持ちを後押しするために

工事者や設計者は、多くの技術や経験が必要なのだろうと思います。

 

 

ゆあさ