大角設計室のブログ

おだやかなくらし。刻が染み込む家をみんなで創ります。

設計のチカラと、設計者のサガ。

今月は(も)バタバタしていて、なかなかブログが更新できませんでした。

いつもは出張の移動中などに記事を書き溜めているのですが、

それすら出来ない打合せの連続の日々です。

 

さて、直近の記事は「大角事務所」や「設計すること」にたいしての

比較的丁寧な記事でしたので、

今回はすこしリラックスした感じで

「設計者あるある」や「設計することの楽しみ」みたいなネタ記事を

お届けできればと思っています。

 

では、始めたいと思います。

 

 

 

 

設計者がレストランに入ったら、どうなるか?皆さんご存じですか?

 

まずは「メニューを見るだろう?」と思うのが普通なのですが、

設計狂いの設計者になればなるほど、

 

まずは、「建物全体をぐるっと見て、空間を確認します」

「次に家具、照明、レイアウト、カトラリーと続き、

そして、いちばん最後に「メニュー」を見ます。」

 

 

そんなアメリカンジョークみたいな言説が

設計業界にはあるのですが、「空間にも味わい」があることを

設計者は知っています。

 

 

この建物のもつ、魅力がバックグラウンドとなって

味や、シェフの思考、はたまた、食事を食べるお客さんの味覚にまで

影響を与えていると「普通に」思っています。

 

いわゆる「設計のチカラ」というものを

いろんな場面で感じているんですね。

 

 

レストランの例えをだしましたが、

設計者は日常目に入ってくるモノはなんでも、

「設計のフィルター」を通して見てしましがちです。

 

たとえば次に出す例は、「テレビのワンシーン」についてです。

 

 

 

(NHK朝の連続テレビ小説「舞い上がれ」一場面)

 

現在放送中の、連続テレビ小説「舞い上がれ」一場面を見ていると、

「ああ、なんかいい感じのシーンだな」と思うカットがあったので

写真を掲載してみます。

 

 

主人公とヒロインが、窓越しに会話を交わすのですが、

きっと、このカットを撮るために、NHK美術スタッフは

「主人公の家をデザイン(設計している)したんだろうな」と

すぐわかりました。

 

 

設計者から見ると先程のシーンは

以下の解説付き画像のように見えています。

 

中央線に赤いラインを引きました。

左の主人公の家はお好み焼き屋さんらしく、

外壁は鉄板です。色はブラックです。飾り気のない素朴な仕上げとなっています。

 

対する

右のヒロインの家は町工場の令嬢っぽく

外壁は工業製品で仕上げてあります。色は対比的に白で仕上げてあります。

 

 

 

窓はどう設計されているでしょうか。

 

左の主人公の家は、短歌を詠む歌人らしく

木製建具であり、はめ込まれたガラスも型板ガラスという模様付きの

クラシックなタイプです。表面仕上げはモヤモヤしており、心情をよく表しています。

 

対する

右のヒロインの家は

アルミサッシであり、これまた工業製品で出来ています。

ガラスの表面仕上げもサンドブラストなどで均一に曇り加工されており

ボンヤリと像は見えるけど奥底までは見通せない心情を表現しているのだと思います。

 

 

要するにこのワンカットのセットデザインは

右の家と左の家が似ているようで、違い過ぎないような

「絶妙な対比的な距離感」が表現されているのです。

 

物理的な距離感と見えない心理的

主人公とヒロインのつかず離れずの関係性を見せています。

ささやくようなデザインの表現で

シーンの厚みを過不足なく伝えています。

 

 

他にも細かいことを言えば、屋根の軒先出具合、重なり、窓の高さ、服装など

このワンシーンのための舞台装置の設計があることで

深い意味や、説得力、リアリティを生み出しているんだろうなと感じました。

 

 

 

私たちの設計する家やお店も、

そこで設計したデザインが住まい手に知らぬ間に影響を及ぼし

素敵な人生を形づくる、そんな手助けが出来ればいいなと

思っています。

 

それが設計者のサガなのです。

 

 

 

 

ゆあさ