大角設計室のブログ

おだやかなくらし。刻が染み込む家をみんなで創ります。

もやもやを抱えて

岡山県の中北部に位置する高梁市


城下町が残る長閑な町はつかの間のGWで
帰省した人や旅行者でにぎわっていました。





(工事依頼時の蔵。漆喰が剥離している)


依頼は、蔵の修復。
細い路地に面した蔵が、雨漏りによって
漆喰壁が剥落し、通行人にとって危険な状態なので
なんとかなおして欲しいとのことでした。






なおす方法は色々ありますが、
必要とされる耐応年数や
予算、町並みにある景観上の問題などを考慮した結果
左官職人により、塗り壁でなおす方法を選択しました。

塗り鏝でヌリヌリやっていきます。





左官は建築の要素の中で、
唯一
継ぎ目無く、一体的な仕上げが可能です。

木材にしろ、瓦にしろ、タイルにしろ、クロスや新建材にしろ、
つなぎ目に「目地」とよばれる
つなぎ目にでてくる処理が必要です。


なぜ目地が必要かというと主に二つの理由があります。
まず一つ目は
目地があることで、部材を細かくし、人力で運搬出来る範囲で
広い面積の壁や天井、床等を順次仕上げることが出来ます。


二つ目は
二つ物質が接するときに、必ずスキマができるからです。
なぜなら、世の中には厳密にみると同じサイズ・形状のものは存在しません。
タイルも、既製品のパネルもビミョーに歪んでいます。
さらには、同じ条件で物質が存在しないということは
乾燥や湿気、地震や風などによる変化がそれぞれテンでバラバラだということになります。

そうなると、二つのくっついているかに見えていたつなぎ目から
真っ先にズレて汚く見える変形がおこり始めるのは必至です。
そのために建築では、材料に合わせて目地をとり変形を吸収してきました。




でもこの目地が結構厄介です。
大体において、奇麗じゃないんですよね。
また、目地が多いということ。特に外部において安易に目地をつくることは
水の侵入する可能性を増やすことにもつながりますから注意が必要です。


どうしても必要な場合もありますが
経験豊かな職人と組む場合は、不必要な場合が多いです。
漆喰も乾燥収縮により、小さなひび割れが入りやすいため
あらかじめ目地を入れさせてくれといわれることも多々あります。



でも漆喰の機能美はやっぱり
大きな面を、一気に目地なしで塗れることなんですよね。
そうして出来上がった壁面は
一見純白の均質な白色に見えますが、じつは微かな小手跡や水の乾き跡、
スサなどの有機的繊維質が垣間見える豊かな表情をもつ「白」壁です。



もやーっと見える向うに、機能的で美しいものが出来上がっている。
そう、さながら秘苑大飯店の中華丼のように…。


帰り際に施主の方から、これで安心して
梅雨を迎えられますとおっしゃっていただきました。


レイニーブルーにならない・・
いかんな、もやもやしてきた。


終わったはずなのに・・・
いつまで追いかけるの・・・






(事務所の近くにある古刹。白と黒のリズムが抜群に美しい)

まぁ、そんなこんなで皆さんも、もやもやしながら
ぼんやりと美しい漆喰壁を眺めてみてはいかがでしょうか。






まだ見ぬ塗り壁の世界がみなさまをお待ちしてますよ




ゆあさ