大角設計室のブログ

おだやかなくらし。刻が染み込む家をみんなで創ります。

古材と功罪

これまでのおさらい
o-sumi.hatenablog.com



古材を使っているプロジェクトと

そうでないプロジェクトとあるのですが

そもそも「古い材」を使う良さ。またはデメリットは何でしょうか?




設計者の観点から言えば、古材を使うことで
新築の時に欠けてしまいがちな「刻の重厚さ」を
真新しい空間につくり出すことができます。

特に私たち大角設計室のような、
過去からの技術、民家の文化的背景を感じながら
ゆっくりと「積み上げられてきた美」を「緩やかに深化」させる
手法には相性が良いように感じます。

完成後、あまりの馴染みように
一般の方が(時には設計者でさえも)建物を見たとき、
ここは古い家を直したのですか?と聞かれることが、ままあります。




一方で相性の良さは諸刃の剣でもありまして
古材を使うことで「労せずして得た空間の重厚さ」に安心し
自分の努力を怠ったデザインになりがちです。

巷に見受けられる、古材だけを貼り付けた
デザインのなんと多いことか。
さらに始末が悪いのは、
その脈絡のない古材に、深遠なストーリーを付加してして喧伝しています。
さらにさらに始末が悪いのは、
一般的には「古材を使っている」=「和モダン」「匠」みたいな共通認識が
まかり通っている現実ですね。




施工者の方にとってはどうでしょうか。
施工者にとって、古材の中には選別すれば
驚くほどの良材が(材種、大きさ、加工技術、目の詰まった年輪など)手に入ることになります。

大切なのは、「古ければ。何でもいいって訳ではない」ということです。
新材にも、そんじょそこらの古材よりいい物はいっぱいあります。」
プロの目利きが必要ですね。
だからこそ、このあたりが一般人には古い材と、新しい材を見比べる術がありませんから
工務店や職人の良心によるところが大きいのです。


ただ、古い材を使うということは先ほども申しましたように
まず、使用する材を厳選する、そして、それを再加工するといった
「普段以上の手間暇」がかかります。



でも、だからこそ、
良識のある工務店に加え、ちゃんと設計監理できるデザイナーがいれば
いつもよりも気と心をこめて、仕事に臨んでくれるはずです。


よく大工さんが教えてくれるのですが、古い丸太のノミの跡などを見ながら
「こんな立派な仕事、今ではあまり見ないよ。」
「恥ずかしい仕事を(現代の自分たちも)しなきゃないよね」と。




もちろん
瑞々しい新材で覆われた、若々しい建物もよさがあります。
それはそれで、新築をフルに生かせるやり方がデザイナーには求められます。

今回はそれとは少し違う、新材を熟成した古材が支える空間となります。

何度も申し上げますが
古材を生かすも殺すも、設計者・施工者次第です。
それが古材の功罪なのでしょうか。


ゆあさ


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