大角設計室のブログ

おだやかなくらし。刻が染み込む家をみんなで創ります。

あとのあと


あとのあとが好きです。



ひらりとめくれる風のあと。




目には見えないけど、その過ぎ去ったあとを
美しい痕跡を、まっさらなのれんの家紋をゆらすことで
ふんわり感じることができます。






人が入ってくる気配。
もしくは、出て行ったあとの静寂。


そんな雰囲気のあるほの暗い玄関。
もしくは太陽の跡でしょうか。





私たちの仕事に関わっていただく職人には
かなりの力量が求められます。

そして、それに応えてくれる大勢の職人の手の跡は
彼らが工事を終えたあとも
美しく形を宿します。





彼らの手にかかれば
こんなものですら、なんだか美しい。


その美しさは、目を凝らさねば気づかぬほど
柔らかく、薄く、透明です。






それらを消し去るのではなく、
いや、漂白してしまうことで
透明な良さをはがさないように、


新しい空間に、その透明な質感を受け継げるかは
手の仕事にどれだけ敬意をはらっているかで
決まるような、気がしています。





単純に、美しいだとか
新しいだとか
難しい技術だとか
伝統だ

とか、

そんなもの言いっこなしに

何かの結果である「かたち」に
それまでの過程の「なにか」物語が見えるでしょうか。





きっとすべからく、すべての家に
いろいろな物語が潜んでいます。


でもその声は、ひそひそひそと
静かな産声を上げたばかり。




あなたの家の壁は、壁以上の意味を持っていますか。
床は?屋根は?キッチンは?
いかがですか?


建築が出来たあとのあとが
幸せなかたちで結ばれるよう、設計者は今日も線を描いています。



ゆあさ