大角設計室のブログ

おだやかなくらし。刻が染み込む家をみんなで創ります。

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設計監理した住宅がコンテストで受賞しました。

 

そんなこんなで表彰式と受賞のパーティが広島であり

 

琥珀色の液体などを痛飲しながら祝われてきました。

 

 

「選ばれる」ということで言えば

最近開催された東京マラソンでは大迫選手が日本記録を更新し

東京オリンピック代表の座を獲得していましたが、

 

 

設計コンテストなどでは、設計の「良し・悪し」を決定づける

 

「わかりやすい数値」のようなものは存在しないわけで

 

その評価の基準はとても曖昧で

 

自分の目から見ればダメな作品が高評価を得たり

 

もしくは自分がいいなぁ、と思っていても審査員から不評な場合もあります。

 

 

 

 

そんな審査員の評価が大きく自分の設計の評価を

 

大きく左右するわけですが

 

よくこの切り口の作品を拾い上げてくれたなと、主催者側に感謝しています。

 

 

 

 

ですが、たとえ評価されなくても

 

私たちの住宅は「審査員や学会」に向けてものではなく

 

当然ながら「住まい手のため」に力が注がれています。

 

 

ですから、こんな名誉はさささと忘れて

 

次の仕事に専念します。

 

 

 

 

ここ広島にはそんな「設計者の矜持」ともいえる

 

建築作品がいくつも建っています。

 

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原爆ドームとその周辺の建物計画

 

 

「Atomic bomb dome...Atomic bomb dome...」

 

広島駅からバスで約10分。到着のアナウンスで目が覚め

 

静かにその場に向かいます。

 

 

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原爆ドームを離れ平和記念資料館へ向かう途中に

 

戦没者の慰霊碑が水盤の傍に静かにしずかに佇んでいます。

 

ひろい空。

 

凪いだ水面。

 

そんな静寂が平和への願いを自然と喚起します。

 

 

 

 

原爆ドームから一本の線が伸びており

 

それらを中心線として慰霊碑の向こうに全ての建物が

 

慎重に配置されています。

 

 

その建物構成は設計者が、「原爆の被害者、悲惨さ、平和へのただ一点に」

 

想いを集約できるように設計者が考えて図面の線を引きました。

 

 

 

設計者の間ではこの設計思考は広く知られており

 

僕も高校生の頃、その考え方に

 

設計という仕事のもつ力を学び、強く影響を受けました。

 

 

 

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[This line is....なんたらかんたら]

 

 

ガイドが訪日客に語りかけています。

 

その話を側で聞いていてとても感銘を受けました。

 

ちょうど青いリュックを背負った外国人の足元を指差しています。

 

見ると石の目地のラインが

 

ピーンと張り詰めて、まっすぐに原爆ドームへ向かっているのがわかります。

 

 

私たちが学校で学んだ時は「軸線」という抽象的な言葉で

「抽象的な平和」を「知っているつもり」でしたが

 

このガイドが現実的に見える、足元にある一本の線を

 

そう言った背景を知らない訪日外国人へ伝え

 

丁寧につなげていっている姿は

 

「現実に立ち現わせる平和のアウトラインそのもの」でした。

 

 

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私たち設計者の描く、一本の線がどこに繋がっていくのか。

 

その一本は、施主一人一人と未来を結ぶ、そんな幸福の赤い糸なのかもしれません。

 

 

 

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設計者のたった一本の線は、誰が為にあるべきか。

 

 一本の線が設計者の手から離れ、住まう人へと、完全に手渡された時

 

設計者が見据えたもっと先へつながる線を引きたいなぁと

 

いつも思っています。

 

 

ゆあさ