軽み。
かるみ、または、かろみ、ともいいますが、日本建築ではしばしば
この「軽み」という言葉が使われます。
現代建築ではあまり使われてはいませんが・・。
建築だけでなく、茶道や華道、歌などでも
日本文化のデザインの思想や様子として使われています。
僕はこの「かろみ」という語感が大好きで
デザインする時に意識する概念でもあります。
「軽い」と「軽み」は違います。
「軽い」「かるい」では
ちょっとどころか、だいぶん意図するところが違います。
デザインって難しいですよね。
一般的にはこの言葉は
俳句で知られている松尾芭蕉を評することばとして
つかわれている気がします。
この俳句は軽みが出ていてすばらしい。。みたいな使われ方ですね。
お茶室をこの現場では創っているのですが
一般的に広くつかわれる言葉は「ワビ・サビ」でしょうか。
でもこの「かろみ」は「ワビ・サビ」とは少し違っています。
「ワビ・サビ」はどちらかというと私の考えでは
心の内側に染み入ってくる感情をおこさせるデザイン。または、
心の中を一度空っぽにしてくれるようなデザインとでも言いましょうか。
心の中に光を灯すイメージです。
一方、「かろみ」は「ワビ・サビ」の感情とは、
ベクトルが少し違っているように個人的に感じています。
「かろみ」のデザインは、心の内から少し外側に解放してくれる
浮遊感を伴ったものではないでしょうか。
心の中を軽やかに、明るくしてくれるデザイン。
そんなことをこの屋根を見た時に感じました。
住宅では危なっかしくて決してできないデザインですが
茶室という特殊条件によって
日本人が連綿と受け継いできた、文化や思想が
具現化されていると感じました。
さきほど「ワビ・サビ」と「かろみ」は
やや対照的なデザインの性質を持つと書きましたが
実際は、その二つの本質の根源は一緒だと思います。
「割れや錆び」を磨き上げて「すこし垢抜ける(明るくヌケル)」ことで
「かろみ」が生まれるのが理想的かなと感じています。
実際は施主の希望などもあるので「暗いほうが好み」「明るいほうが好み」と
わかりやすいデザインを商売的には求められるのですが
「ワビ・サビ」と「かろみ」がひっそりと同居するデザインは
「陰・陽」二つの要素がからまる重層的で豊かな空間にもなり得ます。
こころを空っぽにして、こころをつつんでフワッと浮かばせてくれる。
そんなデザインをいつか実現したいナァと思います。
軽いわたしが言っているので、いつ実現することやらです。
ゆあさ