大角設計室のブログ

おだやかなくらし。刻が染み込む家をみんなで創ります。

直立するものの美

家が出来上がってくると

大角設計室が図面として引いてきた一本一本の線が

現実の世界に建ち現れます。

 

家を創ること。設計することを言葉にすると

そんな当たり前な表現になるのですが

「家をつくる」という言葉の中に忘れがちな

大切なものが隠されている。

そんな気がしています。

 

 

 

たとえば「柱がたつ」ということ。

 

宮城県の古民家を見ると、玄関を入った土間には

必ず、独立して壁から自立した柱が立っています。

 

 

うねうねと大地から這い出るようにたてられたその柱には

「うしもち柱」「ほいと柱」「よめかくし柱」「だいこく柱」と

印象的な名前がつけられています。

 

どんなエピソードがこの柱に隠されているのだろうと

想像力をかきたてられます。

 

 

またぼーっと眺めていると

「美しいな」と

単純に思います。

 

 

 

翻って、私たちの生活する住居はどうでしょうか。

 

昔の家と同じように、現代の家にも

「柱はたって」います。

 

でもその柱に、皆さんの生活が染み込む余地があるでしょうか。

 

住んでいるなかで、心を受け止めてくれる美しさが

柱の中に見出せるでしょうか。

 

 

自分の家の柱がなんの樹種か分からなくたって

構造上どのくらいの荷重を支える役割かを理解できなくたって

単純に「美しいな」と思える存在でしょうか。

 

 

地球が何十年もかけて育ててくれた大木を

切出し、削り、加工し、整え、運搬され、刻み

組み上げられるという途方もないエネルギーを

全ての家に見出すことが出来るかが

設計者の技量なのかもしれないと

東北の民家の柱は教えてくれる気がします。

 

 

 

ゆあさ