これまでのおさらい
「この工場は温度コントロールが
とっても、とっても、とてつも大事なんですよ。」
今回作っている建物は、特殊な機械部品を作る工場なので
温度管理が命です。
そこは知っていたので尋ねます。
『では、どのくらいの温度管理が出来れば理想でしょうか?』
「・・・そうですねぇ。」
「・・まぁわかりやすく言うとですね
1度温度が変化するとするじゃないですか。
そうするとですね
使っている金属によってはプラスマイナス5ミクロンの
膨張が起きちゃうんで、それって製品として使い物にならないんですよ。」
『『・・・・・』』』
『・・・・!!ええ!!!』
恐るべし、日本の製造業と思いました。
そんなわけで、換気扇の風量計算をし、
フードもオリジナルで設計して、配置などに四苦八苦。
でも、やれば出来ちゃうもんですね。
まだ知らない分野の設計は緊張もしますがやっぱり楽しい。
製造業の一翼を担う
建設業もやるもんですよ。
さらにさらにで、巨大な天井裏には、隠れてしまいますが
空調関係の配管がビッシバッシに張り巡らされています。
空調管理を建物に徹底する定石は
建物を外気から完全にシャットアウトすることなのですが
この建物はとある理由で
外部をバッチリに囲い込むことができないので苦労しました。
ガッチリ建物の外部を作りこめない理由は
消防法の関係で、消防署との協議の結果
「・・そうですね。この建物は、もし工場で事故があった場合
爆発が起きてしまっても、大丈夫なようにするために、
外壁は爆風に耐える設計で強い強度を持たせて
でもですね・・・
逆に屋根は綺麗に爆風で吹っ飛ぶもの、
しかも吹っ飛んでも危険のない軽い素材で作っていただきたい。ハイ。」
『それって、屋根はなるべく断熱の為ゴッツク作りたいんですけど・・・?』
「ダメですね。ハイ。」
『壁はゴツゴツ。屋根はペナペナ?』
「そうですね。天井もダメ。ハイ。」
『・・・・( ム・ゴ・ン )・・・。はい詰んだ。』
いやー法律も微に入り細に入り、良く出来てますね。
もう細かすぎてミクロネシアですわ。
皆さんが何気なーく見ている町の風景の一軒一軒が
何かしらの法律によって、知らず知らずに誰にも知られずに
町の安全を守っているんですね。
でもその良く出来た法律も
「個々の特殊な案件・事情」に対峙する時、杓子定規に受け止めると
特殊な形や、断熱、使い勝手に不自由さを感じさせることも
現実には生まれます。
でもそれだと困るので、協議と設計の工夫を認めてもらえました。
理想と現実のハザマですね。
そんな法律と現実のハザマで、特殊解が求められる時が
実は結構あります。
設計のプロが各法律の解釈を咀嚼し
今までになかった落とし所を悩みながらも見つけることが出来れば
法にも、町にも、人にも良しの
未来へ残していくに相応しい建物になるのかもしれません。
ゆあさ